※学パロ
 
友達の女子から借りたというセーラー服は、菊に恐ろしいほどよく似合っていた。丈の短いスカートの裾から伸びる日焼けを知らない膝小僧が、男の足と分かっていても妙に艶かしく見える。のは、まだ、いい(というより、とても良かった)。
問題は胸だ。
本田菊は男だ。男であるからして、その胸はぺったんこのはずである。それが今や、柔らかそうな二つの膨らみが堂々と存在しているのである。こいつ、まさか本当に女になったのか!?ギルベルトは若干混乱していた。
「その胸はどうした!」
「…触ってみます?」
菊は意地悪そうに笑って見せ付けるように胸を反らした。それを挑発と取ったギルベルトはごくりと喉を鳴らして腕を伸ばす。制服の上から恐る恐る掴んだ胸は堅かった。詰め物ですよ、と菊がさらりと言った。
「がっかりしましたか」
そう聞いた菊の方が、今さっきの自信たっぷりな態度をどこにやったのか見るからに落ち込んだ顔をしていたので、ギルベルトはうんともすんとも言えなくなって、黙りこくって掴んでいたままの柔らかくない胸を捏ねてみた。視界だけならそれなりに感動的である。
「虚しいことしないでくれません」
菊が心底泣きそうな声で言った。だったら初めからこんなことをしなければいいのに、とギルベルトは呆れ返ってふんと鼻を鳴らす。
「かってぇおっぱい!」
離し際に人差し指で弾いたら、こんっと鈍い音がした。何が詰まっているのか、ギルベルトが菊に問うと、彼はとうとう零した透明な涙をきらきらさせながら、「あなたへの想いです」とはっきり言い切った。「は、」と瞬間冷凍されて固まったギルベルトが問い返す暇もなく、菊は涙もそのままに思い切りよくセーラー服に手をかけた。
「っお、おい!」
「固いおっぱいの正体が気になりませんか」
脱ごうとするポーズのまま固まって黒髪の少年はゆっくりとギルベルトに向き合う。きらきらと光る物憂げな真っ黒い眼差しは不思議にギルベルトの心にすとんと落ちた。