7/10
 ブランチ



外は冷たい風に小雪が舞っている。
久々の非番は昨日の朝までの慌ただしさが嘘のような穏やかさだった。


「腹減った」
炬燵に懐いたまま部屋の主が呟いた。
「どっか食べに出ます?」
ザッピングしていた大口が提案してみると
「出るまでやないけど作るのめんどい」
子供のような口調で返された。こんな時は彼はこう続けるのだ。
「なぁ。何か作って?」



冷蔵庫の中身をチェック。
キャベツに鶏肉。にんにくもある。
「嶋本さーん。パスタでいいー?あと鶏肉使っていいー?」
「まかせるー」
視界の隅に先週の鍋の名残が入った。


にんにくはスライスして洗ったキャベツはザクザク切って。
鶏肉は一応一口くらいに切っておく。
嶋本の部屋には二口コンロも大きな鍋もある。

ぐらぐら沸いた湯に塩を入れパスタを茹で始める。タイマーは忘れずに!!

フライパンでオリーブオイルを温めてにんにく投入!!

意外だ、とよく言われるが大口もそれなりに料理は出来るのだ。
只、一人では味気ないのでしないだけなのだ。
今日みたいな休日のブランチを作るのは楽しくて仕方ない。
あの人が「お前こんなん作れるんやな」と目を丸くするのが楽しい。
これもう少し辛いのがいい、とか言い合うのが楽しい。
これ美味い!って言って貰えたら更に楽しい。


「ええ匂い」
にんにくの香りが立ってきた。鶏肉投入!
炬燵から動く気配がなかった部屋の主がふくふくと笑う。
その様子に更に楽しくなってきた。
皮がカリカリしてきたらキャベツをドン。
跳ねた油が手の甲に落ちる。地味に熱い。


俺が作った物がこの人を喜ばしてそして血となり肉となる。


キャベツがしんなりしてきたら鍋の名残のゆずごしょう。
小皿でゆずごしょうを酒で溶く。
計量スプーンの一番小さいのの半分がゆずごしょうなら酒は一番大きいので二杯。

ていっとキャベツや鶏肉に和えるように掛けて馴染ませる。
すると合わせたようにタイマーが鳴る。


ザッとパスタの湯切りをしてたら皿が出てきた。
赤くなった手の甲をペロリと舐められ息を飲む。
「はやくはやく♪」
まるで子供のようにいたずらっ子が笑った。

パスタと具を和えたら皿にどん!

いつの間にか炬燵の上にはフォークやグラスが出ていた。
「ここはあれでしょ非番のブランチですよ?」
冷蔵庫に常備されてるビール(発泡酒に非ず!)を取り出すともう、嶋本さんの目がキラキラした。


「意外にイケるな」
はふはふと口に運ぶ嶋本さんの笑顔が俺の休日のブランチなんだ。

「でしょ?」
その笑顔を見れるなら大人しく手の上に転がされちゃうよ、俺!



---------------------------------------------------------


Tさまに捧げます。
ついったーでリクエストいただいたレシピと小話。

ゆずごしょうはメーカーで辛さが違うのでお好みで調節して下さい。
伊勢はお酒は大匙一杯半くらいで後はパスタの茹で汁で調整します。
春先はアスパラとかでも美味しかったです。





( 目次|  )




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -