「(しまった…)」
ざあざあと雨の煩い学校の玄関で鞄をごそごそと探り途方に暮れる。昼頃からいきなり降ってきた激しい雨はしばらく止みそうもない。あいにく持ってきた傘は旦那に渡してしまった。
「(もう一本入ってると思ったんだけど…そういえばこの間壊れてたから捨てたんだった。)」
打つ手なし。これからどうしようか。ため息をついて壁にずるずるともたれかかる。見上げた空は黒々とした雲をたたえていて、触れた雫は冷たい。
「(濡れて帰ったらこれは絶対風邪ひくなぁ)」
それはできれば避けたいので雨の中を走って帰るという案は没にした。
「(部活が長引くとか、本当に何なんだ…)」
へたりとその場に座り込み頭を抱える。掛け持ちの新聞部で突然号外を出すといっていつもより3時間も遅くなってしまった。かすがは途中で帰っちゃうし、ナマエは風魔にべったりだし…もう最悪…。
「佐助?」
呼ばれた方を振り向くと噂をすれば何とやら、ナマエが不思議そうにこちらを見ていた。
「傘…忘れたのか?」
その言葉に頷けばナマエは「佐助でもそんなことあるんだな。」と珍しそうに笑った。(あ、格好いい…)
「ん。」
ひょいと目の前に差し出された物を見れば、黒い折りたたみ傘。
「え…?ナマエこれ…」
「貸してやる。佐助今日部活頑張ってたし。」
そっと差し出された傘を受け取り、じっと見つめる。これってまさか…相合い傘…!?やばい、嬉しい。
「ちょ、これ…」
「小太郎〜!傘ねーから入れてくれー!」
気付けばすでに隣にナマエは居らず、いつの間にか学校を出ようとしていた風魔に向かって走り寄っていた。
「んじゃな、佐助。傘、いつでもいいから。」
にかりと笑って風魔の隣に寄り添うナマエ。風魔は喜んでいるような、照れたような表情をしていた。(羨ましい…)黒い傘を片手立ちすくむ俺様。
ああ、もう、ちくしょう。やっぱり今日は雨の中を走って帰ろうか。
(あれ?佐助は?)(なんでも風邪ひいて休みらしいぜ。雨ん中走ったんだと)(は?あいつバカじゃねぇのか?)