end(old)
外から爽やかな風が吹き、ふわりと真っ白なカーテンが揺れた。グラウンドから体育をしているクラスの笑い声が聞こえてきてぴしゃりと窓を閉める。

「しーす。」

扉の開く音がして声のした方を振り返ると、この保健室唯一の常連がいた。(常連といっても1ヶ月に一度、来るか来ないか程度だが)

「あぁ、またあなたですか。挨拶ぐらいきちんとしてください。」
「別に、ちゃんとしてるだろ。失礼のし、と、しますのす。」

悪びれもなく言う彼はどかりとベットに座る。

「あなた、授業はどうしたんですか。」
「別にどうでもいいだろ、そんなの。どうせおじゃるだし。」

つまらなさ気に呟くと、彼はベットに寝転がる。あの情けない白塗りの顔を思い出して笑いがこみ上げてきた。

「ああ、それは本当にどうでもいいですねぇ。」

くつくつと笑えば彼はごろりと寝返りをうった。少々面倒くさいが、これも一応仕事なので保健室来訪者ファイルというものを取り出して、彼の名前を記入する。

「あなたも物好きですねぇ。他の人はめったに近寄ってこないというのに。」

この保健室に、しかもさぼりに来るなんていう酔狂者は、おそらくこの学園に彼ひとりだろう。

「自覚はしてるんだな…」

病状の欄に"頭痛"と記入する。確か先日は腹痛で、その前は貧血だった。

「(ボキャブラリーも貧相になってきましたねぇ…)」
「うわ、メスとか置いてあるし。」

気付けば彼がすぐ隣に来ていた。

「これ、何でこんなに研いであるんだ?滅茶苦茶切れ味良さそうだな。」

メスを手に取りまじまじと見つめる彼に私は怪しげに笑う。

「それはもう織田理事長を切り裂くためですよ!私が理事長の体を切り、臓器をいじくり、皮膚を縫合する!!考えただけでゾクゾクしますね。」

恍惚とする私に、彼は呆れたように溜め息をひとつつくと「小太郎と俺だけにはすんなよ…」と呟いた。小太郎とやらはともかく、あなたは少し切り裂いてみたいですねぇ。

「片倉をズタズタのボロボロにしてみてくれよ。それなら俺もやってみたい!」

ぱっと笑って言う彼に「まぁ、その方については機会があったらですね。」と答える。すると彼は「片倉怪我しろ〜片倉怪我しろ〜」と上の階に念を送り始めた。(効くんでしょうか?)比較的静かな保健室にチャイムの音が鳴り響く。

「はぁ、もう授業終わったのかよ。」

扉の方へ歩き出す彼に「おや、もう行くんですか?これからお茶にしようと思いましたのに。残念ですねぇ。」と言えば彼はこちらを振り返って、にんまりと笑った。




(俺なんかまた気持ち悪くなってきたなぁ〜)(おっと、それは大変ですね。紅茶は嫌いなんでしたっけ?)(うん。日本茶か果汁系でよろしく。)

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