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休み時間とはうって変わって静かな教室の中に、シャープペンシルのカリカリという音と教科書のページをめくる音が響く。教室の付属品のような教師の声に、熱心に授業を受ける者もいれば、全く聞いていない者もいる。

「(あ、旦那弁当つまみ食いしてる。)」

いつも尊敬するお館様の授業以外では寝ていることの多い旦那が起きていて珍しいと思えばろくなことをしていなかった。

「(はぁ…あの調子じゃ昼休みには弁当なくなっちゃってるだろうし…どーすんだろ。)」

ふぅ、とため息をつき視線を巡らせると自然とナマエに目が止まる。グランドから吹き上げる風が窓際の席のナマエの髪をなびかせた。細く、比較的色素の薄い髪は太陽の光を帯びてキラキラと綺麗なオレンジ色に染まる。その髪の色が自分の髪と似ていて、俺様は少し嬉しくなった。

「(頬杖つくの…癖なんだ。)」

新たな発見に俺様もこれから頬杖つくようにしようかなぁ、とひとり思案する。好きな人の仕草を真似するなんて、我ながら重傷だなぁ。けれどどうしてもナマエの気に入っている物や細かい口癖など、少しでも他の奴らより多く共通点を持とうとしてしまう。

「(あ、あくびした。)」

眠たそうに数回目を瞬かせると、目の端に浮かんだ涙を乱暴に拭って机に突っ伏してしまった。見えなくなってしまったナマエの顔を、残念そうに見つめていると突然名前を呼ばれた。

「…とび…猿飛!」
「…ッ!!」

しまったと思い立ち上がった時には時すでに遅し。クラス中の視線が俺様に集まっている。(旦那まで…)

「猿飛がぼーっとしてるなんて珍しいな。ちゃんと前向けよー。」

教師の言葉に「すいませーん。」と適当に答えて席に座る。クスクスと周りの奴が笑う声がした。(ああ、俺様としたことが…)ふい、と視線を泳がせればいつの間にか起き上がったナマエが俺様に向かってにやにや笑っていて、心臓が跳ねる。

「(俺様かっこわる…)」

思わず後悔とも羞恥ともつかない複雑な顔をしているとナマエが俺様に向かって口パクでこう言った。

「(お・ば・か・さ・ん)」




(それって俺様の口癖じゃん!!)

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