「キィィィィック!!」
「OZの平和はおれが守る!」
「おっとっと」
「あははは」
ちりん、という風鈴の音と共に居間からにぎやかな笑い声が聞こえてくる。
「(ナマエさんの…声?)」
いつもは僕まで子守りを任されてはたまらないため避けて通るが、普段と違う声が聞こえてもしや、と声のする方へ向かう。
「あ、おはよう。佳主馬くん」
居間へ着くと案の定わらわらと子供たちに囲まれたナマエさんがいた。
「あ、佳主馬だー!!」
「ねー!次は私もキングカズマやりたい!」
「佳主馬も遊べ!」
きゃあきゃあと騒ぐちびたちに頭痛のする思いがして額を押さえる。子供は、正直苦手だ。
「ほら、佳主馬くんが困ってるよ。さっき健二が庭の方にいたから、1番に捕まえてきた人にアイスプレゼント!」
じゃあよーい、どん!
ナマエさんが掛け声をかけると同時に騒いでいた子供たちが一斉に庭の方へと駆け出す。
「さすが、小さい子はパワフルだな」
子供達が駆けていった方を見つめながらナマエさんが縁側に腰を下ろす。
「あれじゃあ今度は健二さんが相手をさせられるね」
同じように隣に座りナマエさんを見つめると悪戯っぽい笑みがかえってきた。(その表情にときめいてしまったのは内緒だ)
「すごい、慣れてるね」
「ん、まあ一応お兄ちゃんだったからね」
ナマエさんの涅色がゆるりと緩む。
「でも健二はあんなに活発じゃなかったし。どっちかといえば大人しかったけど」
遠く、空を見つめるナマエさんが懐かしそうに呟いた。確かに今の健二さんからは活発な幼少期、なんていうのは想像できない。むしろナマエさんの方が行動力がありそうだ。
「子供の頃は俺の真似ばっかりしてさ。喧嘩とかも結構したけど、可愛い弟だよ」
ナマエさんが愛おしげに微笑む。さわやかな風が頬を撫でて陽だまりと呼ぶには鮮やか過ぎる光が足元に影を落とした。兄になったら、僕もあんな風に笑えるようになるのだろうか。
「そういえば佳主馬くんにも妹さんがいるんでしょ?まだ赤ちゃんだっけ?」
こくり、と頷いて今名古屋にいる幼い妹を思い出す。まだ赤ちゃんだから、ということで妹と母は陣内家泊まらずに今年は日帰りで帰っていった。
妹は、嫌いではないがどう接すればいいかよく分からない。ただ、あの小さな手のひらを見ていると守らなくては、という想いが強くなる。
「最初は戸惑うだろうけどさ、きっと楽しくなるよ。それに―――」
そこで言葉を切ってナマエさんが立ち上がる。タイミングよく風が吹いて深い栗色の髪がさらさらと揺れた。
「佳主馬くんの妹さんなら、きっと君に似て可愛らしそうだ」
「……え?」
それって、どういう、意味?
目を瞬かせる僕にナマエさんが手を差し伸べる。光を反射した瞳がキラキラと輝いて惹き込まれるようにその手を取った。
「さあ、あの元気な子供たちが帰ってくる前にアイスでも買いに行こうか」