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「初めまして、佳主馬くん」

そう言ってその人は綺麗に笑った。健二さんが今年の夏も泊まりにやってきた。あのOZ占拠事件から一年後のことである。正式に夏希姉ぇの婚約者となった健二さんが連れてきた血縁者。それがナマエさんだった。

「初めまして、健二の兄のナマエです」

そう言ってナマエさんが微笑んだとたん、おばさん達の黄色い声が上がった。直美おばさんなんかは「夏希!あんたこっちでいいの!?」なんて言っている。その言葉に「私は健二くんがいいんですー!」と夏希姉ぇが少し顔を赤くして答えた。ちなみにその隣で健二さんは夏希姉ぇよりも顔を赤くしていたんだけど。

「はは、俺なんかに夏希ちゃんは勿体ないですよ」

ふわり。再び微笑。思わず息を呑む。
OZで強い相手と対峙したときのように指先が痺れてナマエさんに釘付けになる。目が、焼けつく。
熱に浮かされたようなそれは健二さんの「ああ!」という声で四散した。静止していたかのように静かだった心臓が突然動悸を始める。

「そうだ!兄さんキングカズマのファンだったでしょ?佳主馬くんがキングカズマなんだよ!」

僕を指差す健二さんに全員の視線がこちらを向く。

「カズマ……?」

びくり。何故か肩が跳ねた。健二さんよりも深い涅色の相貌に射抜かれる。かっと顔に血が昇った。健二さんや夏希姉さんが何やらわいわい話しかけているが耳に入らない。でもその声だけははっきりと聞こえた。

「初めまして、佳主馬くん。これから一週間、よろしく」

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