end(old)
「(ああ、空腹だな)」

そんなことを考えながら無駄にでかいホグワーツの比較的人通りの少ない廊下をのろのろと歩く。隣を行く友人、ジル・フレイヤも同じことを思ったのか「なんかお菓子持ってない?」と物欲しげな表情でこちらを向いた。俺がそれに首を横に振るとはあ、と大きなため息を零して肩を落とす(肩を落としたいのは俺だ)

「持っていたなら俺がもう食ってるよ」
「違いないな」

日ももう十分に中天に昇った昼間とは総じてお腹がすくもので、いくら朝たくさん詰め込んだとしても若い体はすぐにそのエネルギーを使いきってしまう。あと少しだと自分に言い聞かせ大きく息を吸って空腹をはぐらかそうとするが当然それで誤魔化しきれるわけもなく深呼吸はため息となって吐き出された。

「ナマエくん!」

突然廊下に響いた自分の名に緩慢な動きで振り返るとかの恋人と友人関係にあったと思われるピーター・ペティグリューが小柄な体をちょこまかと動かしながらこちらに走ってくる。ああ、面倒くさい。

「ナマエ、くん。今シリウスが…君のこと、すっごい探してて、めちゃくちゃ、不機嫌なんだ。だから……」

今すぐシリウスの所へ行ってくれないか?という意味を含ませてペティグリューが俺を見上げてくる。かなり上がっている息に彼がかなり必死で俺の元へやって来たということが窺える。

「うわ、それはご苦労だったなペティグリュー。ほらナマエ、さっさと行って来いよ」

俺はこのまま談話室に行くから、と我関せずな様子のジルの足は既に談話室の方を向いている。俺が「面倒くさいな」と呟けばペティグリューが「そんな!」と絶望的な声を上げた。

「おいおい、お前ら本当に恋人同士なんだろうな?」

顔を真っ青にしているペティグリューから視線を外して俺はジルを見つめる。

「俺はね、ジル。授業中にこそこそ連絡を取り合ったり、食事の時に背中合わせの席になるようにしたり、1日一回は会って手を繋いだり、おはようとおやすみの挨拶は欠かさなかったりだとかそういうことをする手間も時間も労力もないんだよ」

俺が早口で捲くし立てればジルは大げさに肩を竦めた。いつの間にか人通りの多い大広間の前まで来ていた俺たちはそれなりの身長はしているものの比較的小声で話しているので目立ってはいない。

「じゃあ何でお前シリウス・ブラックなんかと付き合ってるんだよ。というよりナマエ、恋愛嫌いなわけ?」
「嫌いっていうわけじゃないけど……「ナマエ―――!!!」

廊下に聞きなれてしまって大声が響く。同時に周りにいる奴等が一斉に俺を見つめて道をあけた。その先にいるのはもちろんシリウスで。

「ジル、俺はさ」

ペティグリューが言っていた不機嫌さは何処へ行ってしまったのか、無駄にキラキラとした笑顔でこちらへ駆けて来る恋人に踵を返して談話室への道を急いだ。





恋愛とか面倒なわけよ

(だからじゃあ何で付き合ってるんだって)(……断ったらもっと面倒だろ?)


♪Thanks title by 確かに恋だった

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