end(old)
それは愛おしくそしてとても悲しい夢、だったのだろうか。
目を覚ませばいつもの自分の布団の上にいた。それはやっぱりあちらに行く前に記憶の中で最後にいた場所で。

「(帰って…きた、のか?)」

いつ?ふいと時計を見ればほんのりとした人工的な光を放つデジタル時計が何の音もたてずに一秒の時を刻んだ。最後に自分が何時にここにいたのかは覚えていないがたいして時間はたっていないように思う。

「(あんなに…あちらに、いたのに…)」

時間の進む速さが違うのか、難しいことは自分にはよく分からなかったがそれでももうあの場所に帰れないということはなんとなく分かった。いや、感じたとでも言うべきか。

「(…佐助)」

悲しませて、しまっただろうか。 ぎゅっと手のひらを握る。掴めなかったぬくもりの残滓が確かにそこにあった。

「佐助…俺は―――、」

帰れなくなっても、 構わなかったのに。
(君は確かにそこにいて、僕も確かにそこに居た。僕らの共有できた時間はほんのわずかで、無限に続く時間の螺旋が一瞬だけ重なり合ったに過ぎないのかもしれない。だけどその一瞬は一生消えることの無い鮮烈な思いを僕の中に残して僕と君を引き離した。)(これから進む世界、全ての景色に君を探して僕は生きていくのだろう。)(ああ、なんて呼吸が、し辛い、)

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