短編(old)
!学パロ
!不良で女ぎらいで口の悪いサンジのお兄ちゃんとエース(2010年あたりに書いたものです)



先日、俺は突然知らない男に抱きつかれた。
いや、こういう言い方をするとどこか語弊が生じるかもしれないがあれは事故だったんだと思う。……多分。

俺は私立の高校に通ういたって普通の学生だ。世間一般から見れば少しガラの悪い部類にはいるかもしれないが、まァその辺は少し横に置いておく。
とにかく俺は学生としての本分を全うすべく愛チャリ(ストライカー)に乗って学校への道を急いでいたわけだ。そいつが現れたのは俺が住宅街の角を曲がろうとした瞬間。突然だった。

「ッうわっ!!」

無言で曲がり角から勢いよく飛び出してきたそいつは自転車がいるにも関わらず悲鳴もあげずに器用にストライカーを漕いでいた俺に飛び付いてきたのだ。突然の出来事になすすべもなく俺は自転車と共に男に押し倒される。

「くっ、来んな!!」

男はそのまますがるようにぎゅっと俺に抱き着いて、角の向こう側にいるらしき誰かに向かって声をあげる。

「…喧嘩で誰かに追われてんのか?」

それなら俺にもよくある。俺たちの学校は近くにある海軍学園とは犬猿の仲なのだ。小競り合いだってよくある。喧嘩かと思ってそう問いかけると男ははっとした様子で俺から体を離した。染めた色じゃない綺麗な金髪が頬を掠めて靡く。こちらをばっと見つめた男に、目を奪われた。
今まで近すぎてよくわからなかったが、男は随分整った顔立ちをしていた。髪は長めの金髪で後ろで高くひとつにくくっている。長く垂れた前髪で右目は隠れて見えなかったが、左目は綺麗なサファイアブルーだ。そして俺と同じ制服を着ていた。(大分着崩してはいるが)

「あっ、すまねぇ!!」

そう言ってのし掛かっていた男が飛び退く。いや、と男を見つめたまま答えれば角の向こうから複数の足音が近付いてきた。男がひっ、と悲鳴をあげる。

「クソッ!あいつらまだ追って来やがった!わりぃっ、礼はいつかするから!」

そう言って男が立ち上がる。すると声をかける間もなく猛スピードで路地を駆け抜けていった。ぽかん…とその姿を見送ると男が駆けてきた角から、遅れて数人の少女たちが現れる。

「あははっ待ってよ!」
「怖くないよ〜!」

俺と同じ学校の制服を着た少女たちはそう言うと男の走っていった道を追いかけて消えていった。あいつ、女に追われてたのか?
思わず彼らの走っていった方を向いて首をかしげる。とにかく、変な奴だった。



この間の出来事を思い出して家のリビングで大きなあくびをひとつもらす。すると同時に上の部屋からガシャーン!と派手な破壊音が響いた。のどかな休日には似つかわしくない音である。確か、今日は弟が仲間たちとテスト勉強をするとか言ってたが……まぁ実にはならないだろう。(なんたってあの万年赤点のルフィだ)さっきから暴れる音や怒鳴り声が絶えないしな。

コーヒーでも飲もうかと立ち上がるとピンポーンとインターホンの音が鳴った。それと同時にダダダダッと階段をかけ降りる音が家内に響く。おいおい、あいつら家を壊すなよ?
もう一度押される呼び鈴に分かった分かった、と呟いて玄関の扉に手をかける。ガチャリ、と戸を開けるときらめく金髪が目に飛び込んできた。

「どーも、すんません。クソ弟引き取りに来たんスけど」

先程まで思い出していた人物の登場に目を見開く。男は以前の制服姿とは違って、レストランのウェイターのような白いワイシャツを着て、腰に黒いサテンを巻いていた。すごく、似合っている。
何も言わない俺に男は訝しげに眉を寄せる。その仕草も雰囲気によく合っていて、なんというか……その、かっこよかった。
背後から階段をかけ降りた足音が近づくと同時に俺の動悸も上がる。

あれ?何で俺ドキドキしてるんだ?

玄関へ続くドアが勢いよく開いた。そして目の前の男のものとは違う金髪と見慣れた弟の黒髪が飛び出してくる。お、と男が声をあげる。それに反応して男の方を振り向けば目があった。深い青の虹彩が俺を射抜く。心臓が大きく跳ねた。

あれ?これって、もしかして、

俺が口を開こうとすると男より一回り小さい金髪がぐっと身を乗りあげる。そして拳を震わせると大声で男を怒鳴り付けた。




クソ兄貴!!

(テメェわざわざ迎えに来てやったお兄ちゃんに対して暴言吐くとは何事だァ!このクソ愚弟が!テメェが給仕サボったせいで俺が手伝わされてんだよ!)(うるせぇ!兄貴は元々当番だったろうがクソ野郎!大体来る5秒前にメールしてんじゃねぇよ!遅せぇんだよ!)(あっはっは!サンジの兄貴はおもしれぇな〜!)
- ナノ -