短編(old)
!片想い
!高校パロ



死ね。馬鹿。この野郎。今すぐ目の前で間抜け面を晒して笑う金髪を殴ってやりたくなった。

初々しかった中学時代を終えて同じ高校に入学した謙也と俺。お互いに一番の友達だと豪語していた。俺たちは一生一緒だぜ、なあブラザー。そんな感じのノリでいたにも関わらず、謙也の奴は高校に入った途端さっさと彼女を作りやがった。
まあ分からないでもない。極めて平均的なスペックの俺に比べてあいつは確かにそこそこな感じのイケメンだ。それが中学の時は超絶正統派イケメンの白石や財前なんかと一緒にいたせいで引き立て役になっていたにすぎない。分かっている。だから高校でそいつらと離れて、女の子たちがしっかりと謙也のことを見るようになったらこうなるのなんかよく分かっていた筈だ。でも。

「なあなあ、どないしたんナマエ?」

しかめっ面で眉間にシワを寄せる俺を見て謙也が不思議そうに首を傾げる。お前がムカつくからこうなってるんですけど?真実はまさにその通りだがもちろんそんなこと言える訳もなく俺はふいと顔を背けると別に、と小さく呟いた。俺だって、友達なら祝福してやるべきだとは思う。黙っていたならともかく謙也は彼女ができたことをいの一番に俺に知らせてくれたのだ。きっとそれは大切な友達ならばこそだろう。
しかし俺はちっとも嬉しくない。それはやはり俺が謙也に抱いている感情が特殊だからであって。

ああ。ちくしょう。俺はこの金髪スピード馬鹿が好きなのだ。
同じ高校に入って喜んでた矢先に彼女なんて作りやがって。しかも相談もなしに事後報告ときた。なんの心構えもなしに照れ臭そうな笑顔で報告された俺の身にもなってみろ。馬鹿野郎。

当たるまでもなく砕けた恋心に俺は泣きそうになる。まあ、男同士だ。叶うわけないとは思っていた。しかしもうちょっとなんとかならなかったのか。
踏ん切りさえもつかないままにいきなり打ち砕かれた俺の想い。そんな自分自身を思うと悲しいやら切ないやら。

しかももっと最悪。謙也が彼女出来てん、と差し出してきた携帯に写っていたのはなんと、俺の姉貴だったのだ。
だれか嘘だと言ってくれ!自分の好きな奴が姉弟と付き合ってるなんてそんな有りかよ!!……人生とは本当に無情なものである。だから目の前で不思議そうな阿呆面晒したこいつをぶっ飛ばしたくなるのも致し方ないと思う。
他人ならまだしも(いや、良くはないが)姉貴って……!諦めようにも諦めきれないというか……あんまりだ。これは今まで友達というぬるま湯に浸かっていた罰なのだろうか。神様という奴は残酷である。いや。

「ナマエ?だから何なん。やっぱ怒っとるやろ」

残酷なのはお前だ。謙也。

「……別にって言ってんだろ」

さっさと携帯仕舞えよ。割るぞ。
そう言ってしまいたいのを抑えることしかできない。ずっと変わらないと思っていたんだ。俺とお前の関係って。もちろん謙也の中では何も変わっていないんだろうけど。でもやっぱり違うだろ?
彼女ってさ。普通友達よりも、大切なもんなんじゃねーの?好きのベクトルが違うってことも謙也はそんなやつじゃないってことも知ってるけどさ。俺と彼女……姉貴はあいつの中で同じくらいなんだーっつうかさ。俺の方が、ずっと謙也と一緒にいたのに。

黙り込んだ俺を謙也が何なん?と言いながら覗きこむ。そして何か閃いたように表情を明るくさせると嬉しそうに口元を緩めながら俺の肩を叩いた。

「ナマエ、もしかしてヤキモチ焼いたん?!」
「しねよ」

ほんと何なのこいつ。わざわざ人の傷口を抉りやがって。ヤキモチどころの話じゃねぇよ。嬉しそうな声出しやがって。ああ、もう頼むから。もう、何も言わないでくれ。

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