!五年主
!性悪
!下品
俺には非常に厄介な同輩がいる。
や、同輩といっても奴はアホみてぇに勉強ばかりしている良い子ちゃん揃いのい組で、俺は厄介な劣等生ばかり集まるは組なんだが。
「何処に行っていたんだ苗字!」
今日もまた奴のただひたすら面倒くせぇお節介が始まる。
俺は袴に前掛けだけのラフな格好で振り返るとだるそうに口を開いた。
「出逢い茶屋だよ。なんか文句あるのか?」
「でっ、出逢い茶屋ぁ?お前またっ」
俺の言葉に目の前の…久々知兵助が顔を微かに赤くさせる。
おうおう、毎度初なことで。
分かりやすい久々知の反応ににやにやしていると奴は頭を振って目線鋭く俺を見つめた。
「苗字、忍者の三禁を忘れたのか!」
これは暗に色のことを言っているのだろう。
んなもん辟易するほど聞かされてるぜ。
お前から。
この久々知兵助という男は厄介なことに正論を携えては何故か俺に突っかかってくることを常としているのである。
俺は鬱陶しげに髪を払うと未だこちらを睨む久々知を一瞥する。
「別に溺れてねぇからいいよそんなもん。毎回相手も違うしよぉ。お前も知ってんだろそのくらい」
「相手が違えばいいというものでもないだろう。むしろその中に間者がいたらどうするんだ」
「そんときゃ殺せば良いだろうが。女一人くらいいなくなったところで誰も気付かねぇよ」
だが、と言って俺の言葉に尚も久々知が食い下がる。
ほんといちいち突っかかってきやがって。
面倒くせぇ奴だなぁ。
他のやつらにはこんな風じゃない癖によ。
「んだよ。じゃあこの学園の奴と犯れってかぁ?くのたまは後が面倒だし…まあ穴がありゃあ一緒か」
お前でも。
そう言って久々知を見ると奴は流石に驚いたようで一歩後ずさった。
ちょうど良い。
いつも絡んでくる腹いせに少しからかってやるか。
俺はぺろりと唇を舐めると目を細めた。
「そいやぁお前、すっげえ睫毛長いよなぁ。肌も白いし」
そう言って久々知へと一歩足を進める。
奴はぎょっとしたようで勢いよく一歩後退した。
進めば進むほど久々知は後ろへと下がっていく。
そっちは壁だぜ久々知。
簡単に追い詰められる久々知に愉快な気持ちになる。
調子に乗って壁に押し付ければ見るからに顔がひきつった。
それにニヤリと笑って更に言葉を紡ぐ。
「目もでかいし髪も絹糸みてぇに細くて柔らかい」
綺麗に結ってある髪を軽く持ち上げて香りを嗅ぐようにその束ね髪に顔を埋める。
すぅ、と大きく息を吸えば久々知の体がビクリと跳ねた。
ああ、おもしれぇな。
「香りも甘い」
ゆっくりと顔をあげれば狼狽えた表情と瞳がかち合う。
くりくりとした真黒の瞳は頼りなげに揺れている。
「女みてぇ」
そう笑って久々知に口付けた。
予想以上に柔らかい唇に軽く驚いたが、そんなことはおくびにも出さずひたすら目の前の唇を食む。
数回舐ぶるようにすれば簡単に口が開いた。
それにほくそ笑んで舌を捩じ込む。
俺、は組だけど房中術は成績良いんだよな。
口の中で舌を吸ったり歯列をなぞれば久々知から微かに艶やかな声が漏れた。
よし、遊んでやろ。
「ん、は…ふ、んう」
首筋から撫でるように腕を這わせて片手で頭を抱けば久々知の手が俺の胸元をぎゅっと握った。
これ、俺の必勝コンボね。
口の中に溢れた唾液を啜ればびく、と久々知が震える。
つうかこいつ、抵抗しなさすぎじゃねぇ?
そろそろ飽きてきたので最後にべろりと唇を舐めて顔を離す。
すると白い肌を真っ赤に染めた久々知がとろんとした瞳で俺を見上げた。
「エッロい顔」
唇をつり上げてにぃ、と笑うとハッとした様子で久々知が唇を押さえた。
赤かった顔が更に赤く染まる。
けれど怒る様子は微塵もない。
おやおやぁ?
もしかしてこれは。
「お前、俺のこと好きだろ」
確信的な俺の言葉に久々知が目に涙をためて顔を歪ませる。
俺はそれに綺麗に笑ってみせた。
薮蛇だぜ。
久々知兵助。
色に溺れろ
(溺死させてやる)