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【実写バリケードと死んだディセプ】
バリケードにとって、死とは与えるものである。もちろん優に500万年の時を生きるサイバトロン星人にだって死という概念は存在するが、それはスパークが機体を離れることであり、オールスパークという大いなる循環の中に還元されることだ。死、とは我々の種族にとって大したことではない。現にバリケードは今まで誰かが粉々に破壊されたって特別感傷を抱いたことはなかった。そう、たった、今までは。

オプティマスプライムが奴の腰部装甲を貫いたとき、バリケードは今までになく冷静だった。あれは致命傷だと他人事のように思った。いや、実際他人事なのだ。同軍だとはいえ、奴は他人だ。いくらあいつがバリケードと同期であっても。共に訓練した間柄であっても。何度任務を共にしていても。スコルポノックがなついていようとも。プライベートで関係があろうとも。
もがく奴の腰をオプティマスプライムがねじ切ったのを見届けてバリケードは退却した。
奴のスパークが消え去ったのを感じた。今まで見てきたものと同じである。いや。同じではない。バリケードは今までにない感情の起伏を感じていた。オプティマスプライムに対する憎悪と、そして、拭いがたい喪失感。
散っていた同志たちは数多くいる。しかしこのような感情を抱くのは初めてのことだった。バリケードは後悔していた。奴の、機体の一部でも持ち帰らなかったことを。破壊された機体などただのスクラップである。普段ならどうこうしようとも思わない。ただ、今に限ってはそれが必要なことだと感じたのだ。スタースクリームなどには言えようもない感傷だが。

我々にとっては死など無意味。ただオールスパークに還元されるだけのことである。それが考慮されるべくは、タイミングによるものだけだ。しかし今、バリケードのブレインは死、という概念の考え方を改めた。死はスパークが機体を離れること。オールスパークの大いなる循環に還元されること。そしてそれは、如何なるタイミングで訪れるに関係なく、憎むべきものである、と。
なんのことはない。ただバリケードは寂しくなったのである。もう二度と、奴と顔を会わせることが出来ないのが堪らなく嫌だった。死を誤認していたバリケードはもういない。かの機体がスパークを失ったとき、バリケードの一部もまた、同時に死んだのだ。

(あなたは私に死を与えた:トリカブト)

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