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 僕のヒーロー(1/5)



僕と洸汰くんの前に立ちはだかる男。
ウォーターホースの事件が起こった当時にニュースで見たことがある。
目の前にいるこいつは…確か敵名“マスキュラー”。
屈強な見た目とは裏腹に俊敏な動きで襲いかかってくる。
防御するのが精一杯な状況でマスキュラーは僕に言った。



「そうそう。知ってたら教えてくれよ。爆豪ってガキと……なんだったか?もう一人の名前忘れちまった。ま、いいか。爆豪と青髪のガキはどこにいる?一応仕事はしなくちゃあ…」

「(かっちゃん───!?それに青髪って……!!)」



彼らの目的が垣間見えたけど、それを深く考える間もなく襲いかかるマスキュラーの攻撃。
あの腕から出ている筋肉の筋みたいな“個性”。
スピードも威力も僕より…!



「…………!!」



だけど僕には救けなくちゃいけない人がいる。
かっちゃん達のことも気になるけど…今は考えるな…!
集中しろ!目の前の敵に!

今の僕じゃスピードも劣る。
ダメージも与えられない!
こいつは強い!!
それに救けも来ない!!

だけど────…
どれだけ打ちのめされようと僕だけは諦めちゃいけない!!



「できるできないじゃないんだっ…ヒーローは!!命を賭してキレイ事を実践するお仕事だ!



今の僕の最大火力。
ワン・フォー・オール100%!!

マスキュラー向けて放った拳は辺りの地面も巻き込んで粉々に砕けていく。
その衝撃で飛ばされて崖から落ちそうになる洸汰くんを何とか服の裾を噛んで捕まえると地面へと引きあげた。
幸い洸汰くんに大きな怪我はない…よかった…。

だけど僕の両腕はマスキュラーの攻撃を受けた時に左を、ワン・フォー・オール100%を放った時に右を負傷して…もうまともに動かせない。


「施設に行こう…こっからは近……………」



倒したと思っていた。
視界の端で動く筋繊維をまとったあいつの姿。
“個性”を解いて現れたマスキュラーはほぼ無傷の状態で笑いながら僕を見た。



「テレフォンパンチだ。しかしやるなあ!緑谷…!!」

「(ウソだろ……100%だぞ…!?オールマイトの────…力だぞ!!?)」



マスキュラーはそのままゆっくりと僕との距離をつめていく。
どうしよう。考えろ。考える時間…!!



「なっな…何がしたいんだよ!!敵連合は何が…!!」

「知るかよ。俺ァただ暴れてえだけだ。ハネのばして“個性”ぶっ放せれば何でも良いんだ。覚えてるか?さっきまでのは遊びだ!俺言ってたよな!?遊ぼうって!!な!?言ってたんだよ!」



マスキュラーの様子が先程から変わる。
ポケットをまさぐった拍子に大量の義眼を飛び出ていく。
お目当てのものが見つかったのかポケットからひとつの義眼を掴んだ手を取りだしニッと笑った。



「やめるよ!遊びは終いだ!おまえは強いもん!こっからは……本気の義眼(め)だ」



嫌な予感がして洸汰くんに僕へ掴まるようへ促す。
洸汰くんが僕にしがみついたのを確認するとその場から飛び上がる。
そのすぐ後にマスキュラーの攻撃が繰り出されて、僕らがいた地面は瞬く間に雪崩のように崩れていく。

さっきまでと比べ物にならない威力。
速さも力も……遊びだったんだ…!

本当に────遊び感覚で僕らを殺そうとしてたんだ。



「ぶわ!!」

「あ、クソ。勢いあまった」



ダメだ…!!



「(施設まで行ければ相澤先生がいるハズ!先生に“消して”もらえれば…)」



ダメだ!!
ビビるな!!



「ここから施設までの距離を追いつかれずにいけるか!?ただでさえ合宿の疲労がたまってる。そんな状態で背を見せて獣道を…」(ブツブツ)



ムリだ。

考えるな!
今!ここだ!戦って!勝つしか!!!!
おまえに道はないんだ。緑谷出久!

救けるんだろ!!



おまえの原点を思い出せ!!





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