アトラクトライト | ナノ

 Re:オリジン(1/4)



突然モスキートーンのような高音が聞こえたかと思うと頭の中に流れてくる誰かの記憶。
ほとんどが途切れていて霞みがかっていたけど所々鮮明に映っていた。

母親と思われる人が亡くなった時。
父親と思われる人からの拒絶を確信した時。
友達と思われる人が血を流して倒れている時や怒鳴り訴えている時。



そして彼がヒーローに対して絶望した時。



「………」



君は明るくてなんでも出来てしまう人だから順風満帆な人生を送っていると思いこんでいた。

だけど笑顔の裏には悲しい記憶も辛い記憶もたくさん抱えていて───
記憶の中の君がひとりでいる時はいつも眉をひそめて何かに耐えるような表情を浮かべていた。



「……ハル…!!!」







場所は変わって秘密基地。
いつものように洸汰は一人でいると突然流れてきたハルの記憶。
あまりに惨い光景と感情に洸汰は吐き気を感じて口に手を当ててうずくまっていた。



「なんだよ…なんだよこれ……」



あいつヘラヘラ笑ってたじゃん…!
あいつだって苦しかったくせに…悲しかったくせに…
どうして……そんなことなかったかのように笑ってんだよ……!?



「………」



洸汰は流れる汗を拭うと立ち上がると目の前に気配を感じて顔を上げる。
マントをまとい仮面をつけた大柄な男が立っているのを確認したと同時に頭にマンダレイの声が響き渡った。



《洸汰…!洸汰聞いてた!?すぐ施設に戻って!私、ごめんね。知らないの。あなたがいつもどこへ行ってるか…ごめん洸汰!!救けに行けない!すぐ戻って!!》

「見晴らしの良いとこを探してきてみれば。どうも。資料になかった顔だ」



男はズンズンと洸汰に近づきながら話を続けた。



「なァ。ところでセンスの良い帽子だな子ども。俺のこのダセェマスクと交換してくれよ。新参は納期がどうとかってこんなオモチャつけられてんの」

「うぁ…」

「あ、オイ」



男が飛び上がったかと思うと逆方向へ逃げていく洸汰の目の前へとものすごいスピードで回り込む。



「景気づけに一杯やらせろよ」



マントから現れる屈強な筋繊維が顕になった左腕。
それを見て洸汰は昔見たあるニュースを思い出す。




《“ウォーターホース”…素晴らしいヒーローたちでした。しかし二人の輝かしい人生は一人の心ない犯罪者によって絶たれてしまいました。犯人は現在も逃走を続けており、警察とヒーローが行方を追っております》




「おまえ…!!」




《“個性”は単純な増強型で非常に危険です。この顔を見かけたらすぐに110番及びヒーローに通報を…尚、現在左眼にウォーターホースに受けた傷時残っていると思われ───》




男のマントのフードが脱げて顔が顕になる。
昔ニュースで見た男の顔。




《敵名は“マスキュラー”》




マスキュラーの顔の左側に大きな傷跡があり、左眼に義眼をつけたマスキュラーは猟奇的な笑顔を向けながら洸汰へと襲いかかった。



「パパ…!ママッ…!!」



涙が溢れて動けない洸汰にマスキュラーの個性によって強化された左腕からの攻撃が繰り出される。
そのぎりぎりのところで緑谷が現れて洸汰を抱えて間一髪攻撃を避けていく。
あまりの威力に緑谷は吹き飛ばされてしまうが、洸汰の無事を確認すると笑顔を零した。



「何で…!!」

「んん?おまえは…リストにあったな」



緑谷は慌てて起き上がるとマスキュラーの動向を探る。
足元には先程の衝撃でボロボロに壊れてしまったスマホが転がっていた。



「(敵と接触させない為に来たのに…ピンポイントで敵がいるなんて…!皆に“ここ”を知らせずに来ちゃった。となると前みたいに増援は望めない…)」



一人だ…僕一人…!
一人で何とかこの敵を!!



「(洸汰くんを守りつつ───…やれるかどうか────…)」



後ろにいる洸汰を見ると恐怖に怯え涙を流していた。
その姿を見た緑谷は弱気な態度を改め覚悟を決めた。



「だいっ…大丈夫だよ、洸汰くん」



やれるかどうかじゃない!!
やるしかないんだ、今。

僕一人で!!!



「必ず救けるから」





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