◎ グッドイブニング(1/4)
眩しい日差しが照りつける三日目昼。
前日に引き続き“個性”を伸ばす訓練が行われていた。
ハードな内容に生徒たちには疲労の色が見られたが中でも気になるのは───
「補習組。動き止まってるぞ」
期末試験で赤点だった切島、芦戸、瀬呂、上鳴、砂糖は補習が深夜まで行われていることもあり他のメンバーに比べて回復時間が少ない。
よって疲労の色はより濃く現れていた。
そんな五人に相澤は容赦なく言い放つ。
「だから言ったろキツイって。おまえらが何故他より疲れているかその意味をしっかり考えて動け」
顔の影を濃くしながら言う相澤に五人は反論することも無く再び訓練へと戻っていく。
それを確認すると次の矛先は麗日と青山に向けられた。
「おまえらもだ。赤点こそ逃れたがギリギリだったぞ。30点がラインだとして35点ぐらいだ」
「ギリギリ!」
「心外☆」
「気を抜くなよ。皆もダラダラやるな。何をするにも原点を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何の為に汗かいて、何の為にこうしてグチグチ言われるか常に頭に置いておけ」
原点。
原点。
原点…。
「!そういえば相澤先生。もう三日目ですが」
「言ったそばからフラっと来るな。緑谷」
「今回オールマイト…あ、いや他の先生方って来ないんですか?」
「合宿前に言った通り的敵に動向を悟られぬよう人員は必要最低限。そして特にオールマイトは敵側の目的の一つと推測されている以上来て貰うわけにはいかん。良くも悪くも目立つからこうなるんだ、あの人は…」
「(“悪くも”の割合でかそう)」
落ち込む緑谷を見てか、ピクシーボムはにっこり笑いながら皆に言った。
「ねこねこねこ…それより皆!今日の晩はねぇ…クラス対抗肝試しを決行するよ!しっかり訓練した後はしっかり楽しいことがある!ザ!アメとムチ!」
「ああ…忘れてた!」
「怖いのマジやだぁ…」
「闇の狂宴…」
「イベントらしい事もやってくれるんだ」
「対抗ってところが気に入った」
「というわけで今は全力で励むのだぁ!!!」
「「「イエッサァ!!!」」」
相澤の喝(ムチ)とピクシーボムの言った肝試し(アメ)により生徒たちはやる気を取り戻しまた訓練へと取り組んでいく。
ハルもその一人であったが頭に過ぎる相澤が言っていた“原点”の二文字。
「(俺の原点……始まり……)」
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