◎ 君に必要なもの(1/5)
その晩、沢田家のツナの部屋にて。
「いてて……」
「…はい!これで完成」
「ありがと!ツナ」
傷の手当てをツナに手伝ってもらい葵は笑顔でお礼を告げる。
ツナはどういたしましてと返し、一日で傷だらけになってる葵を見て眉をひそめた。
「……葵もあんま無理しないでね」
「うん。ありがとう」
「葵は千李さんとどんな特訓してるの?」
「10日間で一撃でも良いから兄さんに攻撃を食らわせるって特訓なんだけど───兄さんに勝てる未来が見えなくて…」
「ええ!?葵がそこまで言うって……」
「あいつの体術はマフィア界でもトップクラスの実力だからな」
二人の会話にリボーンが口を挟む。
ツナはあのリボーンもそこまで言うなんて…と千李の実力が相当なものだと察する。
リボーンは葵の肩にぴょんと飛び乗ると続けた。
「しかも今回の相手は葵。あいつにとっちゃ攻撃だけでなく普段の癖もよく知ってるからこの上なく戦いやすい相手だろうな」
「それに体術は兄さんに教わったから全部見抜かれてことごとくあしらわれてるよ……」
「だからそれを渡したんじゃねーのか」
リボーンが言う“それ”とは特訓開始直後に千李から投げ渡された袋。
その中には少し使い古された銃が一丁入っていた。
ツナは本物の銃を前になんでそんな物騒なもの持ってるのとガーンとなっていた。
「てか葵も銃扱えるの…?」
「イタリアにいた時にちょっとだけ練習してたくらいだけど……」
「筋が良いってジェーンも褒めてたぞ」
「(ジェーンって、葵がイタリアにいた時の親友だったっけ)」
「…買い被りすぎだよ」
正月の時に葵に見せてもらったアルバムに写る金髪の女性の姿がツナの脳裏に浮かぶ。
話を聞く限り、ジェーンはすでに亡くなっているようで葵とリボーンは懐かしげに話していた。
「千李に“勝つ”には今のままじゃダメってことだ」
「……うん。そうだねリボーン。もう少し考えてみるよ」
「ああ」
「遅くまでごめんね。ツナもまた明日から特訓頑張ろう!」
「う、うん!」
おやすみと告げると葵は部屋に戻って行った。
「(兄さんに攻撃を食らわせる方法……)」
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