明日晴れるかな(指輪編) | ナノ

 見えてなかったもの(1/5)



「うあっ!」



ドサッと音を立てて葵が倒れ込む。
千李は余裕そうに笑みを浮かべてそんな葵の目の前にしゃがみこむ。



「ほらほら。さっさと立たないと日が暮れちまうぞ〜」

「…!(今だ!!)」



ぐっと腕に力を入れてバネのように勢いをつけて体制を立て直す。
そして目の前にいる千李目掛けて拳を握りしめるが…



「!」


千李に攻撃を見切られて軽々と拳を掴まれガードされてしまう。
掴まれた拳を引き抜こうとするが力が強く、なかなか逃げることの出来ない葵に向かって千李は嬉しそうに笑った。



「やるじゃん。オレじゃなかったら攻撃食らわせられてたと思うぜ。だけど───」

「っ!?」



千李は拳を掴んでいた手で葵をぐいっと自身に引き寄せる。
バランスを崩して身動きが取れなくなった一瞬を狙い、くるっと葵の身体を回転させると動けないように羽交い締めにしていく。



「残念だったな〜」

「いつっ…!」



じたばたと暴れる葵に対して抑え込む力を強めると葵は痛みに顔を歪ませた。



「(強すぎる……一撃与えるどころか遊ばれてる……!)」

「…っと。一旦休憩な」



そう言って千李から解放されると葵は地面に手をついて肩で息をしながらある考えが頭をよぎる。



「(オレに……本当に出来るのか……?)」

「…………」



そんな二人の様子を物陰から見守る一人の男性。
腕を組みながら小さく呟く。



「山下葵…おまえは強い。だが、自信が無さすぎる。高すぎる壁を目前にして絶望する前に考えろ。必ず突破口があるはずだ」







「い゛っ!?」



死ぬ気の炎が消えたツナは自身の置かれている状況に思わず声が漏れる。
断崖絶壁にしがみつき、為す術もないこの状況に顔を真っ青にしながら叫んだ。



「んなぁ〜〜〜!!!?ここどこーーー!!?」



そんなツナの声を聞いてかてっぺんからリボーンが顔を覗かせる。



「おまえが死ぬ気でここまで来たんだぞ。本能的にやることがわかってるみてーだな。さあ、登れ」

「え!!!?わわっ!!」



その瞬間、ツナが掴んでいた崖の一部が崩れてしまう。
そのまま急降下していくが、真下に川があったためなんとか一命を取り留めたツナは顔を真っ青にしながら河原へと上がっていく。



「ゲホッガホッ!」

「あと100mもありますぞ。これじゃとてもヴァリアーに歯がたちませんぞ」

「うるさいよ!!オレは戦う気なんてないって!!つーかいつの間にここまで降りてきてんだよ!!!」

「今頃ニセモノのリングがヴァリアーに届いたはずだ。賽は投げられたんだぞ。おまえが嫌でもヴァリアーとの全面対戦はもう避けられねーんだ」



それを聞いてボンゴレ最強の暗殺部隊と全面対戦なんてありえるかとツナは声を上げる。
だがリボーンはそんなツナに全く動じることなく続けた。



「2日だからな」

「?」

「2日以内にこの絶壁を登れるようにしろ。それだけの基礎体力は修行の最低条件だ」



目の前に立ちはだかる絶壁は頂上がギリギリ見えるか見えないかぐらい高いものでどう考えても常人にはなし得ない無茶苦茶な修行だった。
だがリボーンはこれは初代が起こなった由緒ある修行だと言い放つ。



「歴代ボンゴレのボスにもいろいろな戦闘スタイルの奴がいてな。武器もそれぞれの個性を生かしたものだった…ナイフだったもの…銃だったもの…フォークなんてのもいた…。その中に一人だけお前と同じグローブを武器に戦った奴がいる」

「え!?」



「大空」と謳われた初代ボンゴレ。
初代は歴代最強と呼ばれている。



「今回もおまえがする修行はグローブを極めた初代のやり方を参考にするからな」

「そんな…………」

「初代はまずいつでもハイパーな死ぬ気モードになれるよう絶壁を登り基礎体力をつけたんだ。まあ、これが修行の入り口だな」

「そ……そんなの知らないよ!!つーかすでに筋肉痛でボロボロだぞ!?こんなのもたないって!!」

「そのための死ぬ気弾だぞ」



またリボーンはツナの額に死ぬ気弾を撃ち込む。



復活ーー!!!死ぬ気で休む!!



すると死ぬ気モードのツナはバタンと勢いよく地面に倒れ込むとコンマ1秒も経たないうちに鼻ちょうちんを膨らませて眠りについた。



「これがミソだぞ。休み方によって修行の効率は何倍にもアップするからな。ガンガンこれを繰り返すからな」



すると先程、葵達の修行の様子を伺っていた男がツナとリボーンの様子を見ながら呟く。



「初代ボスの修行法……あいつ、ツナにあの技をマスターさせるつもりだな。しかし初代がマスターするのに半年かかった技…普通にやってたんじゃ到底ムリだが───…」





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