◎ 嵐の予感(1/4)
夜、並盛町。
街並みには似つかわしくない金属がぶつかり合う音や爆音がビルの上で響き渡っていた。
青い死ぬ気の炎を額に宿す少年はブーメランのような形をした武器を剣を携える男目掛けて投げていく。
男はその軌道をしっかりと見切り避けると大きな声をあげた。
「う゛お゛ぉい!てめぇ何で日本に来たぁ。ゲロっちまわねぇと三枚に下ろすぞぉ。オラァ!!」
「答える必要はない」
すると今度は男が一気に距離を詰めると少年目掛けて刀で切り掛る。
間一髪で攻撃を受ける事には成功したもののあまりの威力に押し負けてビル上から落ちないように自身の体を腕一本で支えているような状況に。
「う゛お゛ぉい。よえぇぞ」
「!」
その時、少年の服のポケットから一枚の紙がひらりと落ちていきそうになったが掴む。
そしてその紙…もとい写真を見つめながら少年は歯を食いしばった。
「(こんなところで…やられるわけには)」
そこには満面の笑みを浮かべる奈々と幼いツナが写っていた。
平和を取り戻した並盛町にまた新たな影が訪れる。
◇
「ただいまー」
「葵おかえり」
玄関を開けるとツナが笑顔で迎える。
そして後から来たランボとイーピンは葵の姿を見るや否や嬉しそうに飛びつく。
「*$¥∵☆?」
「葵〜!葵がいなくてオレっちすんげー暇だったもんね!」
「そういえば学校終わってからどこに行ってたの?」
「あー……えーと……」
◇
時刻は戻って放課後。
並中の屋上には雲雀の姿があった。
「待ってたよ。君から連絡くれるなんて珍しいね」
「突然すみません。お時間ありがとうございます」
骸との戦いを終え、意識を取り戻してから葵はずっと自分の弱さを後悔していた。
もっと自分が強ければみんなが傷つかなくて済んだかもしれない、もっと強くなりたい、そう思っていた。
そこで身近で高い戦闘スキルを持つ雲雀に手合わせを頼んだというワケだ。
雲雀は嬉しそうに笑いながらトンファーを構える。
葵もカバンを置き、簡単にストレッチをすると雲雀に向き直った。
「例え君だとしても手加減はしないよ」
「よろしくお願いします」
戦う理由が見つかった葵の拳に迷いはなかった。
それを見てさらに嬉しそうに雲雀は笑う。
こうして小1時間くらい手合わせをするつもりだったが想像以上に雲雀が戦いの手をやめようとせず気づけば日もすっかり沈んでしまっていた。
「(ヒバリさんと戦ってたなんていうと心配かけちゃいそうだしな…)」
「?」
「ちょ、ちょっと散歩してたんだ。アハハハ…」
「随分長いこと散歩してたんだね…」
苦しい言い訳に苦笑いしつつも四人は台所へと向かった。
すると今からパーティーでも始めるかのような豪華な料理が机いっぱいに置かれており、それに驚きを隠せずにいると奥では奈々が鼻歌を口ずさみご機嫌な様子で更に料理を作り続けていた。
するとビアンキとフゥ太もやって来てツナに声をかけた。
「ツナ。これはどういうこと?」
「ツナ兄が100点とってきたとか?」
「え…?いや……普通に今日もダメライフだったけど……」
「誰かの誕生日とか?」
そう言って葵はみんなを見るが自分じゃないと言わんばかりにみんな首を横に振る。
上機嫌な奈々にツナが声をかけてみるが心ここにあらずといった様子で一度では気づかない始末。
「母さん!!」
「!?あらツっ君〜♪葵君も帰ってたのね〜♪」
手に持つ包丁をブンブンと振りながら満面の笑みで答える奈々。
その様子にツナはガーンとなりながらいった。
「包丁危ないって!!」
「た、ただいまです…。なんだか奈々さんいつもと様子が違いますが何かあったんですか?」
「あら。そうかしら…?そーいえばツナや葵君にはまだ言ってなかったわね」
2年ぶりにお父さん帰ってくるって!
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