アトラクトライト | ナノ

 冬休み(1/8)



「はあああ……」



これからやらなければならない事を思い浮かべると憂鬱になって大きなため息をつく。
でもうだうだしていても何も進まないし、重い腰を上げて俺も大掃除をすることにした。
共用スペースは昨日みんなでやったから綺麗だけど、自室はそうもいかず自分たちで掃除をしなければならない。

部屋はそんなに散らかしている方ではないけど、普段からこまめに掃除をしているかと言うと………。



「(よく見ると誇り溜まってるな…。わっ、窓ガラス汚い)」



とりあえず机のもの片付けて…掃除機とかはその後だな。
よく見るとギターとかベースの弦錆びてきてるな。
最後に交換したの文化祭前とかだったっけ?
あんまり弾いてないから良いかと思ってたけどちゃんとメンテナンスしとかないとだな。

運よく買い置きしてあった弦を引っ張り出して交換をすることに。
格闘すること数十分────楽器は輝きを取り戻してピカピカになった。



「……よしっ」



この調子で次の掃除に移りたいところではあるが…綺麗になった楽器を見ていると誰もがこう思うはず。



「ハルくん。掃除は進んで─────」



弾きたい、と。



「うおおおい!何楽器を弾いてるんだい!?」

「あ」



運悪く開けていた扉から入ってきた飯田にその姿を見られて怒られてしまった。
どうやら飯田は普段からちゃんと掃除をしていたようでそこまで時間をかけることなく大掃除を既に終わらせてクラスメイトたちの見回りに来ていたようだ。

流石だなあ。しっかりしてる。



「このままだと今日中には終わらないぞ。早く進めなければ…」

「…………」



楽器のメンテナンス用に引っ張り出した道具や交換した弦などが床に転がっていてさっきより部屋は汚くなっていた。
その様子を見た飯田が心配そうに俺を見つめる。



「ちゃんと掃除します…」

「うむ!頑張ろう!」



飯田に喝を入れてもらった俺は改めて部屋に向き直る。
散らかったけど……うん。そんなに汚れてるわけじゃない。
ちゃちゃっと終わらせてやりますか。

好きな音楽を聞きながら出しっぱなしの物をしまって、ホコリをはたいて、床に落ちたらそれを掃除機で吸い取る。
窓ガラスは“温冷水”を駆使して高圧洗浄機みたく水圧である程度汚れを落としてから雑巾で噴き上げた。



「お〜…」



飯田が部屋に来てから数十分後。
俺の部屋は見違えるほど綺麗になっていた。
最後に置いていた漫画を本棚に戻していた時にあることに気がつく。



「(あれ?10巻だけない)」



おかしいなと思いながら部屋を見渡してみてもその巻は見つからない。
どこに行ったのか記憶を辿っているとあることを思い出す。



「(そうだ!確か峰田に貸してたんだ───)」



俺は立ち上がると峰田の部屋がある2階へと降りていった。
するとエレベーターの扉が開くや否や峰田の悲痛な叫び声が響き渡る。



「あああ!!オイラのレア物が〜!!!」



その声は緑谷の部屋から聞こえてきてちょうど扉が空いていたから俺は中を覗いた。
するとそこには緑谷、轟、青山と黒焦げになって氷漬けになった本を見つめながら嘆き跪いている峰田の姿があった。



「……どうした?」

「ハル」

「えっと…いろいろあって────」



言い淀む緑谷に察してそれ以上追及することはやめた。



「峰田悪い」

「オイラの…オイラの秘蔵品が……」

「自業自得さ☆」



峰田の秘蔵品ってことは…そういう雑誌か。
なんでそれが緑谷の部屋にあるのかは謎だけど…まあ良いか。



「ん?これ全部緑谷のか?」



部屋を見渡してみるとオールマイトのフィギュアが山のように置かれていた。
中には未開封のものや複数個あるものもあり、オールマイトオタクっぷりに思わず感心してしまうほどだった。



「うん!これとかお気に入りで…ゴールデンエイジの初期に出たものなんだけど、なんと数量限定のレア物なんだよ!ほら見て!この自信に満ちた表情!眉毛の角度に眉間の幅!見ているだけでこっちまで笑顔になっちゃうオールマイトスマイル!この歯の色も輝きを再現するために配合された新しい塗料が使われているんだよ!ほら動かすとキラキラするでしょ!?細部までこだわった筋肉のライン!一撃で敵をブッ飛ばす力強さがわかるよね!それに────」(ペラペラ)

「あ、ああ!わーかっこいいなあ!」

「緑谷。それさっきも同じこと言ってたぞ」



緑谷のオールマイト愛を存分に堪能したところで…本題に。
未だに床に崩れ落ちる峰田に俺は漫画を持っていないか尋ねた。



「漫画ァ?オイラ持ってないぞ」

「あれ?貸さなかったっけ?」

「借りたけど次は爆豪に貸すから読み終わったら渡してくれって言ってじゃんか」

「そう言われてみたら────」



朧気ながらも確かにそんなやり取りを峰田とした気がする。



「ごめん、すっかり忘れてた。爆豪に聞いてみる」



そう言い残すと俺は緑谷の部屋を後にした。
向かうは爆豪の部屋がある3階へ。





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