アトラクトライト | ナノ

 君の進む先に光あらんことを(1/5)



「緑谷!!」

「…ハル!どうし────」

「大丈夫か!?ちょっと見せろ!!」



終わるや否やハルが僕目掛けて走ってきてくれた。
そして黒い鞭が出た腕を中心に触診?して何も問題なかったのかふぅと安堵の息を吐いた。



「大きな怪我してないな…良かった」

「……ありがとう」

「…………終わってからで良いからさちょっと話せない?さっき俺────」

「先程の講評を始める。戻ってくれ」



ハルが何か言いかけたと同時に相澤先生からの招集がかかる。
それに気づいたハルは口をつぐむと後で話すと一言告げると相澤先生の元へと行ってしまった。

ハルが何を言いかけたのか気になるけど……



「えーとりあえず緑谷。何なんだおまえ」



黒い鞭のことどう説明しよう…。



「凄く黒いのが顕現していたが」

「暴走していたが技名は?」

「新技にしちゃ…超パワーから逸脱してねえか?」

「どういう原理?」



ワン・フォー・オールのことは言えないけどごまかし切れることじゃない。

言える範囲で正直に…



「僕にも………まだハッキリわからないです。力が溢れて抑えられなかった。今まで信じてたものが突然牙を剥いたみたいで僕自身すごく恐かった。でも」




「デクくん落ちつけ!!」

「俺と戦おうぜ」




「麗日さんと心操くんが止めてくれたおかげでそうじゃないってすぐに気づくことができました。心操くんが洗脳で意識を奪ってくれなかったらどうなるかわからなかった。心操くん、“ブラフかよ”って言ってたけど…本当にわけわかんない状況だったんだ。二人ともありがとう!」

「(…洗脳かける為にふっかけただけなんだけどな。気にしてたのか。明らかに演習の範疇超えてたし)」

「ホントね!緑谷くんの暴走に対して心操くんはもちろん。麗日さんの迅速な判断素晴らしかったわ。友を落ち着かせる為に体張って止めに出る!そうよ。そういうのでいいの!好きよ!」

「麗日びゅーんってすぐ飛んでったもんねえ。はやかったもんねえ。ガッと抱きついたもんねえ!」

「(ガッと……抱き………!!)」



そ、そうだった!
非常時とはいえ麗日さんにぼ、僕…!!!

横目で見てみると麗日さんも芦戸さんに茶化されて顔を真っ赤にしていた。



「考え無しで飛び出しちゃったのでもうちょい冷静にならんといかんでした…。でも…何も出来なくて後悔するよりは良かったかな」

「!(麗日はナイトアイが亡くなった時に“救けたい”って言ってたもんな。それを有言実行しちゃうんだから…すごいよな)」

「良い成長をしているな麗日」

「……俺は別に緑谷の為だけじゃないです」

「!」

「麗日に指示されて動いただけで。ていうか…柳さんたちも黒いのに襲われてるのが見えた。あれが収まんなかったらどのみちB組の負けが濃厚だった。俺は緑谷と戦って勝ちたかったから止めました。偶々そうなっただけで俺の心は自分の事だけで精一杯でした」



俯きながらそう話す心操くんに相澤先生は黙ったまま近づいたかと思うといきなり心操くんの首に捕縛布をぎゅっと縛り上げる。



「「!!?」」

「暴力だー!!PTA!PTA!!」

「誰もおまえにそこまで求めてないよ」



相澤先生は捕縛布を持つ手を緩める。



「ここにいるみんな、誰かを救えるヒーローになる為の訓練を日々積んでるんだ。いきなりそこまで到達したらそれこそオールマイト級の天才だ。“人の為に”。その思いだけが先行しても人は救えない。自分一人でどうにかする力が無ければ他人なんて守れない。その点で言えばおまえの動きは充分及第点だった」

「心操くん。最後アレ。乱戦に誘って自分の得意な戦いに戻そうとしてたよね!パイプ落下での足止めもめちゃ速かったし移動時での捕縛布の使い方なんか相澤先生だった」



僕の言葉に同意するように頷くみんな。
今回の演習で僕だけじゃない。
みんな心操くんの凄さを実感している。



「第一セットの時は正直チームの力が心操くんを活かしたと思ってた…!けど決してそれだけじゃなかった。心操くんの状況判断も動きもヒーロー科のみんなと遜色ないくらい凄くて焦った!誰かの為の強さで言うなら僕の方がダメダメだった」

「そうだな」

「これから改めて審査に入るが恐らく…いや十中八九!心操は二年からヒーロー科に入ってくる。おまえら、中途に張り合われてんじゃないぞ」



ブラド先生の言葉に心操くんは大きく目を見開く。
もちろん僕らも嬉しくてA組とB組どちらに入るのか、それで話題は持ち切りになった。
クラス分けに関してはおいおい決まるようだけど…やるべき事は変わらない。
僕も負けられない!



「フフ…今回は確かに僕らB組にクロ星がついた。しかし!!内容に於いては決して負けてはいなかった!緑谷くんの“個性”がスカだとわかればそれに応じた策を錬れる。つまりだよ!?今からもう一回やれば次はわからない!!」

「やらない、と言いたいとこだが少し時間が残っている」

「?」



相澤先生はじっとハルを見つめる。
そんな相澤先生の視線にハルは首を傾げた。



「やるか?水科」

「…!!やりたいです!」





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