明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 標的09 星の王子(1/3)



すっかり気温も冷え込み葵も寒さに身を震わせていた。
いつも一緒に帰っているツナが今日は何故かいなかったので1人で帰っていると急に体が浮き上がる。
驚く間もなく人の気配を感じた葵はそちらに注意を向けるとブツブツと呟きながら1人の男の子が立っていた。



「――よって、ランキング7位」

「ランキング……?」



そう言い終えると同時に浮遊感がなくなり、地面に足が着く。
男の子はどこに持っていたのかわからない大きな本を取り出すと何やらそれにメモをとりながら嬉しそうに笑う。



「わあ〜やっぱり葵姉はすごいや〜!!」

「え……?」

「ん?……わ!葵姉本物だ!!」



葵の姿を見るや否や男の子は目を輝かせながら葵に飛びつく。
そしてニコッと笑いながら嬉しそうに言った。



「僕、葵姉に会ってみたかったんだ〜!」

「そうなの?でもなんでオレの名前を(いや、それより葵“姉”……?)」

「それはね〜……」



道端に広げていた大きな本を指さしながら言う。



「僕のまとめたこのランキングブックに書いてあるからだよ!」

「ランキング…………もしかして、君はランキングのフゥ太!?」

「そうだよ!」



ランキングのフゥ太はマフィア界隈では有名人。
あらゆるものにランキング付けする能力を持った情報屋で、その正確さから戦略データを欲するマフィアに追われる日々を送っていると葵は記憶しており、周囲を慌てて確認するとそれに気づいたフゥ太は大丈夫だよと笑いかけた。



「なら良かった……。日本はイタリアに比べて平和だけど1人で出歩くのは極力避けてね?」

「わかった。心配してくれてありがとう、葵姉」

「あと、葵姉って呼んでるってことはもしかしてだけど――」

「うん!葵姉が男装してることは知ってるよ。ちなみに苦労してそうなマフィアランキングは27位だね」

「へーそんなのもランキングわかるのか(あはは、意外とオレ苦労してたのな……)」



フゥ太の能力に感心していると嬉しそうにフゥ太は笑う。
そして自身の体ほどある大きなランキングブックを胸ポケット?に収納した。



「(あんな大きな本、どこにしまったんだ……!?)」

「でも、葵姉に会えるなんて感激だな〜!」

「!えと、フゥ太君あのね――」



葵はフゥ太の目線に合うようにしゃがむとなるべく怖がらせないように優しい口調で言う。



「オレが女だってこと、ボンゴレ以外のマフィアの人にはもちろん。出来ればここに住んでいる人達にも内緒にしておいて欲しいんだ。ちょっといろいろと訳ありでさ」

「そうなんだ――……うん。わかった、葵兄!」

「ありがとう、フゥ太君」

「僕のことはフゥ太で良いよ!」

「そっか。フゥ太、わかったよ」



そう言うと2人は笑いあって、穏やかな空気が流れた。

が、そんな2人を見つめる2つの視線。
葵はそれに気づくと相手にバレないよう視線の主を確認する。
そこには黒いスーツをまとった、明らかに平和な並盛には不似合いな存在があった。

フゥ太もそれに気づいたのか不安そうに葵の服の袖を握りしめる。



「……!(震えてる――?)」



そんなフゥ太の頭をそっと撫でながらニッと笑う。



「大丈夫だよ。何があってもオレが守るから」

「!!」

「でも、とりあえず今は――」



葵はゆっくりと立ち上がりフゥ太の手を握ると得意げに笑う。



「逃げよっか!」

「……うん!」



2人は怪しい人物とは逆方向に走る。



「(でもどこに逃げようかな……安心な場所――)」

「葵兄!僕良い場所知ってるよ!着いてきて」

「わっ」



先程まで葵が手を引いていたのに、フゥ太がそう言った瞬間、走っていた方ではない方にグイッと手を引く。
フゥ太がどこに向かうのか葵には検討も付かなかったがとりあえずそんなフゥ太についていくことにした。





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