◎ 標的06 彼から彼女へ(1/5)
いつもの目覚ましのアラーム、ではなく……鳴り止まない携帯の着信によって葵は目を覚ます。
寝ぼけ眼を擦りながら電話に出る。
「もしもし――……どちらさまで――」
「何マヌケな声してるの」
「…………ヒバリさん?」
「ま、いいや。昨日の書類間違いあったから今すぐ直しに来て」
「………………」
雲雀の声を聞きながらうつらうつらとしている葵を察したのかため息をひとつ吐く。
「……あんまりふざけてると女ってことバラすよ?」
「!!」
その言葉で葵は一気に夢の世界から現実へと引き戻される。
それはやめてください!と慌てて答える葵に雲雀は笑うと、待ってるからと一方的に告げると電話を切った。
そこからは葵は慌てて制服に着替えて、身支度を済ませると1階へと降りる。
「奈々さんおはようございます!」
「あら。今日は早いのね」
「委員会があって――」
「そういうこと。ならこっちの方が良いわね」
奈々はそう言うとジャムを塗ったトーストを葵に差し出す。
お礼を言いながらそれを受け取ると慌ただしく家を出ていった。
◇
「ふぁ〜〜〜」
「よ、ボンゴレ。よく眠れたか?」
「ディーノさん!」
1階に降りるとディーノはコーヒーを飲んでくつろいでいて、ツナはそんな彼に挨拶を交わす。
いつものように席についてご飯を食べようとした時、いつもいるはずの葵の姿が見当たらずきょろきょろと辺りを見回す。
そんなツナに気づいた奈々は言った。
「葵君ならもう出たわよ?委員会があるとかで……大変ね〜」
「委員会って――(朝っぱらから呼び出されることもんだ!!)」
「おい、ツナものんびりしてたら遅刻するぞ」
「やばっ」
葵のことを聞こうと意気込みながら朝を迎えたが、当の本人に初っ端から会えなくてツナは出鼻をくじかれたような気分になる。
「(ま、まだまだ時間はあるんだ。焦らずゆっくりと――)」
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