明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 標的03 風紀委員長(1/2)



鳴り響く目覚ましを止めるために布団から腕だけ伸ばして、音を頼りに目覚ましを手探りで探す。
何回か空を切った後、目覚ましを止めることに成功した葵はゆっくりと布団から顔を出す。

眠い目をこすりながら部屋のカーテンを開けると気持ちの良い朝日が部屋に差し込む。
窓の向こうに見える空は雲ひとつない快晴で、自然と清々しい気持ちになった。



「んーっ……よく寝た……」



1つ欠伸を零して、真新しい制服を手にして小さく笑みをこぼす。



「……楽しみだな、学校」



早速制服に着替えてみるものの、初めて着るせいかなんなのか制服を着ている自分の姿に違和感を感じる。
似合ってるのか?大丈夫?と少し心配になりながらも1階の台所へと向かう。



「おはようございます」

「葵君おはよう。あら〜!すごく似合ってるわね!サイズも……大丈夫そうね!」

「変じゃないか心配だったので……ありがとうございます…!」



奈々の言葉に安心した葵は胸を下ろす。
すると少し眠そうなツナの声が聞こえてきた。



「あら。ツー君、今日は起きるの早いわね。葵君が一緒だからかしら」

「べ、別にそんなことないよ!」

「ツナ、おはよう」



葵はニッと笑いながらツナに挨拶をする。
ツナは制服姿の葵を見るや否や似合ってると褒めていて、そんなツナに照れくさそうにはにかみながらありがとうと一言。



「(男のオレが見てもかっこいいって思うよ…さすがだな〜)」

「さあ、2人とも。早くご飯食べちゃってね」

「うん」

「いただきます!」



ご飯を食べ終わり、少しだけ朝のテレビを見たあと奈々に見送られて2人は学校へと向かった。

学校に近づくにつれて自分たちと同じ制服を着た生徒が増えていき、それを葵は珍しそうに見ていて、ツナもそんな様子を微笑ましそうに見ていた。
並中の生徒も初めて見る葵を珍しそうに見ている人もいれば、かっこいいと顔を赤らめている生徒もいた。



「……ん?ツナ、並中ってブレザーだけだよな」



校門の前には学ランを着たガタイの良い強面の生徒たち。
そんな彼らにツナもうわっと顔を強ばらせる。



「風紀委員の人達で……怖い人たちだから正直あんまり関わらない方が良いかも」

「なるほど」

「まあ、普通にしてれば絡まれることはないから――」



そう言いながらいつものように校門を通り抜けようとした時、1人の男に声をかけられる。



「ねえ、ちょっと待ちなよ」

「ひ、ヒバリさん!!?」

「(!確かにリボーンがファミリー候補って言ってた――)」



普段なら声をかけてこないはずの風紀委員、ましてやその委員長の雲雀に声をかけられてツナは何かしたか、と不安で額に汗が流れる。
一方の葵は事の重大性を理解しておらず、不思議そうに雲雀を見つめていた。

雲雀は葵を見ながら口を開く。



「君、転校生?」

「山下葵です。今日から並中に通うことになって――」

「ふーん。……校則ちゃんと読んだ?」

「校則?」



まだ学校に通ってないから学内の素行なんて指摘される要素はない。

2人は頭に疑問符を浮かべていた。



「制服」

「?」

「(制服って……別に獄寺君みたいに着崩してるわけでもないと思うけど……)」

「草食動物の目は誤魔化せても、僕の目は誤魔化せないよ」



雲雀はツナに聞こえないよう葵の耳元で小さな声で言った。



「君――“女”でしょ」

「!!」

「昼休みに絶対応接室に来ること。もし来なかったら――咬み殺すからね」

「ええ!?」



そういうと雲雀はその場から立ち去ってしまった。
女と指摘された葵は動揺を隠せず、大きく目を見開いていた。
そして恐る恐るツナに問いかけた。



「ツナ……オレ――」

「?」

「オレ――男らしくないのかな……?」

「??」



突然の質問にツナは頭に疑問符を浮かべる。



「えっと…オレの目から見ても十分かっこいいと思うけど――?」

「!あ、ありがとう……聞いといてあれだけど、こうやって直接褒められると照れるな…」

「???」

「変な事聞いてごめん。教室早く行こう!」

「う、うん」



葵に手を引かれてツナは腑に落ちないまま教室へと向かった。







朝、HRに担任から転校生の紹介がされた。



「イタリアから来た山下葵君だ。みんな、仲良くするんだぞ」

「よろしくお願いします」



葵はペコッと頭を下げ、笑顔をクラスメイトに向ける。
そんな葵にクラスメイトは顔を赤らめながら各々漏らす。



「めっちゃかっこよくない?」

「中性的なやつよね!獄寺君や山本君とはまた違ったタイプ〜!」


「……なんか笑った顔かわいくね?」

「おいおい。お前ついに男に目覚めたのか?」

「んなわけねーし!」


「(なんかいろいろ言われてるような……)」

「山下の席は……獄寺の後ろが空いてるからそこで」

「げっ!!」



知ってる人の近くで葵は少し安心しながら指示された席へと向かう。
少し嫌そうな顔を浮かべる獄寺によろしくと声をかけると、獄寺は髪をぐしゃっとしながら言う。



「テメーの前かよ……」

「嫌だった…?」

「…………ま、テメーも知ってるやつの近くの方が安心だろ。困ってても手はかさねーけど」

「なにそれ。頼りにしてるぞ〜獄寺!」

「…………。(こいつの笑顔なんなんだ……!気持ちがかき乱されるような――変な感覚になりやがる……っ)」



少し離れた席から葵の様子を見ていたツナはほっとした表情を浮かべた。



「(体育祭の時に獄寺君と知り合ってて良かった。同じイタリアなら来た者同士うまくやってくれれば良いけど――)」





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