家康さまはわたしがかなしいときおかしなかおをして笑わせてくださいます。刑部さまはわたしが退屈なとき、話し相手になってくださいます。半兵衛さまはたくさんの本をわたしに読ませてくださいます。秀吉さまはわたしがないているとき、おおきい手のひらで頭を撫でてくださいます。三成さまだって、ほんとうはあまり食べるのがあまりすきじゃあなくても、わたしがつくったおにぎりなら渋々ながらもきちんと食べてくださるのです。


×××××


みんなが戦にでかけているときは、わたしはお城でぼうっとみんながかえってくるのをまっています。むかし三成さまに、わたしもつれていってくださいと頼んだことがあるのですが、貴様が行くような場所ではないとこっぴどく叱られてしまいました。生憎わたしは刀なんてものをにぎったことは生まれてこのかた一度だってありませんし、きっとこれからもこのひろいひろいお城のなかで平々凡々と生きていくのだろうとおもうのです。


「拗ねるな」


三成さまの手のひらが、ほんのすこし乱暴にわたしのあたまを撫でつけました。みんなが戦にでかけてしまうとわかったときにすぐに機嫌がわるくなってしまうのは、わたしのわるい癖なのです。けれど、おもしろくないものはおもしろくないのだから、しかたがありません。みんなのいないお城は、どれだけひろくてきれいでも、ただの箱になってしまうのです。はああ、とため息とついたら、「拗ねるなと言っている」と、あまり機嫌のよろしくない三成さまのこえが耳をつんざいたので、あわてて口をとじることにしました。


「貴様は、いつまでたっても子供だ」


するりとたちあがった三成さまは、もういちどわたしのあたまを撫でてくださいました。「もう、いくんですか?」わたしの問いかけに三成さまはふんとそっぽを向いて、わたしに背中をむけながら、いいました。「帰ったら貴様の好きなものを買い与えてやる、私が帰るまでに考えておけ」すこしちいさなこえでした。きこえなかったふりをして、もういちどいってくださいとつぶやいてみれば、かおを真っ赤にした三成さまと目があいます。「二度は言わん!」ばしんと戸が勢い良くしめられて、部屋にわたしはひとりで、しんとしたしずかな空気がいっぱいになります。三成さまは、ときどきかわいらしいお方なのです。なにを買ってもらおうかなあ。そんなことをかんがえてみると、とろんと目蓋がおちてきました。つぎ、目が覚めたときには、みんながかえってきていたらいいな。


さみしい毛布の子ども
Apr 24



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