神さまは、世界を七日でつくったんだって。うわ言みたいにつぶやいた彼女は、ふたつの目をきょろりとこっちに向ける。おれは毛布にくるまったままこたえる。へえ、そうなんだ。文字ばかりのむつかしそうな本とにらめっこをしながら、彼女はひとりごとで部屋のなかをいっぱいにした。ほんとうのところはどうなのかなあ。神さまなんているのかなあ。それじゃあ世界はだれがつくったのかなあ。ビックバンってやつなのかなあ。いちばんさいしょの人間はだれなのかなあ。あれ?そもそもわたしたちってなんなんだろう。
「悠太、」
「なーに」
「ふしぎだねえ」
「うん」
「わたしたち、なんなんだろうね」
「そんなむつかしいこと、わかんないよ」
おれ、どうだっていいんだ、きみとこういうことできるなら。おれのことばに目をまるくした彼女のちいさなあたまをひきよせる。彼女のくちびるはやわらかくて、あったかい。それだけはいつもかわらないこと。「すきだよ」しずかにつぶやく。「うん、わたしもいっしょ」やわらかくわらってみせる彼女と毛布のなかにもぐりこむ。世界のはじまりなんてどうだってかまわないわたしたちも、人類の繁殖にはきっちり貢献しようとしてるんだから、可笑しいはなしだよねえ。彼女はそう言ってけらけらわらう。女の子はやっぱりわらったかおがかわいいなあなんて、呑気なおれはもういちど彼女のくちびるにかみついてみせた。
ま
る
い
地
球
の
し
か
く
い
秘
密
Oct 04