読みかけの本をぱたんととじた。風介が貸してくれた宇宙についての本。やっぱりむつかしくって、わたしにはよくわからない。となりの晴矢は目をつむったまま。くろいヘッドホンからはほんのすこし音がもれている。晴矢のすきなバンド。わたしも、きらいじゃあない。


「はるや」

「‥‥‥‥」

「はるやってば」

「‥‥なんだよ」

ヘッドホンをほんのすこしずらして首にかけた晴矢のふたつの目にわたしのかおがうつる。「わたしね、この曲、すき」「おう、おれも」「でもねえ」「なんだよ」「いまは 聴かないでよ」「なんでだよ」「だって、わたしつまんない」「はあ?」

なにいってんだよ、おまえ。晴矢の手がまたヘッドホンにのびる。「だから 聴かないでってば」晴矢の手をつかんでひきよせてみると、びっくりしたかおの晴矢がわたしのうえにたおれこんだ。「おまえだって、」「うん?」「おまえだって、風介に借りた本ばっか読んでたじゃんかよ」
晴矢のかおがあかい。晴矢のちいさな息が鼻にかかって、心臓が浮くみたいにどきりとした。晴矢のぜんぶがすぐちかくにあるから、わたしのかおもあつくなる。「はるや、やきもち?」つぶやくと、晴矢がくちをとがらせる。「ばかじゃねえの」晴矢のてのひらがわたしのあたまをつつむ。うそつき。やきもちやき。あまのじゃく。くちから飛び出そうとしたことばたちはひっこんでしまう。晴矢のくちびるは、こんなにもあつい。



つぎはぎキスハグ
Jul29

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