「ねえ せんぱい?」わたしの髪をゆるくなでるてのひらは いつもみたいにつめたかった。おれ いやだなあ、せんぱいが卒業しちゃうの。こまったようにわらう彼。さむいさむい日だからか 鼻のあたまをあかくしている。かわいいかわいいおとこのこ。

卒業しないでよ。わたしがいなくてさみしいの? せんぱい、さみしいっていってほしいんでしょう。うん いってほしいなあ。

「さみしいよ だってすきだもん せんぱいのこと」ふわりとやわらかい笑みはスープでひたしたみたいにおいしそうで あったかい。おもわず彼の目蓋にくちをくっつけてやれば おどろいて目がまあるくなった顔と目があう。からからわらう彼に わたしもからからわらう。ふたりだけの教室の空気は どこかやんわりしていて、だいすきだった。
「ねえ せんぱい」
「なあに」
「おれのことすき?」

彼はゆっくりと わたしのうえにかぶさった。もういっかいわたしの髪をさわって ちいさくわらう。けっこう すきだよ。つぶやいたら 今度は彼のくちがわたしの目蓋にくっついた。「しってるよ」そうやってわたしのリボンを上手にほどくところとか、わらったらほそくなるかわいい目元も、ぜんぶきみがすき。彼のシャツをつかんでひきよせる。「せんぱい、」わたしの頬にやってくるてのひらは さっきみたいにつめたくない。「おれ 本気だから」わたしの首元にちかづく彼のくちがくすぐったい。しあわせなしあわせなわたしの さいごの放課後。

女の子のかたちをしたプラナリア
Jun 29


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