宇宙がどうやってできたのかとか 人類のいちばんはじめはだれなのかとか そういうこと、たまあにぼんやり考えてたりするときってあるよねえ?わたしがつぶやく。タオルケットにくるまる彼は興味なさげにうなだれる。「んんー わかんない」
きっと 彼の脳みそはわたしなんかじゃあわかりやしない。その頭のなかはふわふわしたわたあめみたいな 毛布みたいにやわらかな そんなもので埋めつくされているんだろうなあ。想像してみるとなんだか甘そうで 舌のあたりがちぢこまった。
「祐希のあたまのなかってどんななの?」
「んんー わかんない」
「今日のごはんなにかなあ」
「んんー わかんない」
「祐希」
「うん?」
「すきだよ」
「うん おれもすき」
いつだって猫みたいに気まぐれなおとこのこだった。色素のうすい髪の毛も 細くてしろい指も いつだってわたしの目をかんたんにうばってしまえる。「おいで」タオルケットをおおきくひろげて手招きをしてみせた彼は やっぱり雲みたいにおいしそうでやわらかい。ほんのすこし肌寒い空気に タオルケットのなかだけがあったかくてあまいにおいがした。
愛と哺乳類
Jun19