「風邪、ひくぞ」
お風呂上がりでびしょぬれの髪の毛を、燐の指がひょいとすくう。ドライヤーの風があったかくて目をぎゅうとかたくつむった。「ねえ、燐」燐の指の感触がわたしの髪の毛をまとうのがここちよくってしあわせで、それとおんなじくらいにさみしくて目蓋のあたりがあつくなる。「ほんとうにでていくの?」ほんのすこしうつむくわたし。一瞬だけ燐の指が動きをとめたような気がしたけれど、きっと気のせい。「ごめんな」燐のてのひらがゆっくりとわたしの髪の毛をなでた。「いつかぜったい、あのジジイとおんなじくらいすげえ祓魔師になる。そうしたら、おれはおまえを迎えにくるから」燐はそれだけつぶやいて、またわたしの髪の毛をゆっくりゆっくり乾かしはじめる。ドライヤーの音。わたしの嗚咽。ふたつが支配する部屋のなかで、燐はまたひとつ、わたしの頭をなでた。


揺れる街まで
May 22




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