※描写はありませんがモブ櫂が含まれます


とある日の放課後、人が居ない教室に櫂を呼び出して殴りつけた。腹が立ったから。それだけの理由だ。最初は目をぱちくりさせていた櫂だったが、すぐに事態を飲み込んだらしい。彼にしては珍しく、困惑の表情を浮かべて目を逸らした。何をしたのか問う気はない。聞く気にもなれない。ただ、馬鹿なことをさせてしまったという、悔しさだけが心に残っていて。殴った手でそっと頬を撫でた。悪かったと。


「…迷惑を掛けるつもりはない、これは俺が好きにしたことだ」
「だけど気付けなかった俺の責任でもあるだろ」
「お前には関係ない」


あくまで誘ったのはこちらで、相手に非はないと言う。それならそれでいいとしよう。誰を抱いたか抱かれたかなんて興味ない。もちろん名前を聞けば見つけ出してボコボコに殴るけど、櫂が言うはずもないことは分かっている。しかし問題点はそれではないのだ。気付けなかった。櫂の寂しさを埋めることが出来なかった。そして見ず知らずの他人に甘え、櫂はずっと傍にいた自分に甘えなかった。自身と櫂への悔しさが収まらず、未だ心の中で渦巻いている。


「なあ、櫂、俺が相手してやるから」
「…!?…何っ、言って…」


自分は至って普通の男子高校生であり、もちろん恋愛感情は女性にしか向かない。しかし櫂トシキは別だ。不思議と何をしても許せる。望むのなら身体も命も惜しまないくらいに。だからもう二度と、こんな真似をしてほしくない。好き勝手だと言われても構わない。櫂には真っ当な道を歩んでいてほしい。辛いなら辛いと、悲しいなら悲しいと、甘えてほしいんだ。


「…俺は、お前を親友だと思ってる。お前は違うのか?」
「そんなことは…、ないが…」
「だったら頼れよ」


反論しようとした櫂の手を引いて力強く抱き締めた。抵抗はなかった。櫂は馬鹿じゃない。己が何をしているのか理解している。だからこそ放っておけない。助けなければと思う。恋人にも家族にもなれない。でも親友だから出来ることもあるのだ。それだけを分かっていてほしいと切に願った。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -