※これは専門知識のない人間が書いた、あくまで創作上の出来事です。一つの話として、人間は無音状態に耐えられず、発狂してしまうそうです。一時間にも満たず精神が崩壊したり、鼓動や呼吸する音だけが聞こえて、音を求めて幻覚幻聴を作り出したり。しかし全ては創作に過ぎません。展開等の細かいところは気にしないでください。


目を覚ました時には既に、見知らぬ部屋にいた。
ナイトテーブルに水差しとコップが置かれているが、飲む気にはなれず乾いた喉を唾で潤した。ベッドから起き上がると足首に鎖が繋がれていることに気付く。鎖は天蓋ベッドの支柱に繋がれているため、引き千切らなければ外せそうにない。長さを見るに部屋の中を行き来する程度は出来るようだ。部屋の奥にはユニットバスがあり、壁際にはキッチンも備え付けられている。格子窓から見える景色はこの場所が高層建造物の一室だということを教えてくれた。扉は電子錠のため、無理にこじ開けることは出来ない。壁に耳を当てても音は聞こえなかった。
ズキズキと耳鳴りがする。防音室なのだろう、音らしい音が聞こえない。どういう目的があって閉じ込められたのか。誰もいない部屋で知る術はない。しかし、何も告げず連絡が途絶えれば、三和やアイチがおかしいと思うはずだ。まだ日にちも経っていない。最悪の想定をイメージするも、諦めるつもりはない。懐を探るとデッキは無事だった。良かった、と溜め息を吐く。


「…三和、…アイチ…」


自力で此処を出ることが出来るなら頼りたくない。迷惑など掛けたくない。事態が事態だからこそ切に願う。助けてほしい。見つけてほしい。自分らしくないと自嘲した。今までも一人だったじゃないか。どうして他人に助けを求めているんだ、お前はいつまでも弱いままなのか。かつての己を思い出し、気持ち悪さに顔を顰めた。改めて孤独を実感したから弱気になっているだけだ。くだらないことを考えるな。助けは来る。来ないなら自力で脱出する。そうだ、挫けるな。


「…俺は諦めるわけにはいかないんだ…」


確かな決意は沈黙に包まれた部屋に飲み込まれた。




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