『俺は絶対に死なねぇ』


頭の中にいつかの約束が蘇ってきた。呼び声も爆音もまるで耳に届かない。目の前で広がる光景に、ただただ現実味が感じられなくて。こうして真っ赤に染まっていく様を、見つめることしか出来なかった。徐々に感じられなくなる生気も温かさも。必死に紡いだ感謝の言葉も。何もかもが夢であれば。そうした絶望感だけが心を支配する。誰一人として仲間を救えない己の無力さが、他人を傷つけた。シャンクスを。そしてエースを。覚悟して進んだ道を、死ぬかもしれない道を、それでも助けたくて選んだ。なのに、救えなかった。最後の最後で油断して。庇ってもらったんだ。


「…エース?」


もう答えないと分かっていても、身体を揺さぶる。頭ではこれが"死"だと理解していた。けれど認めたくなかった。認めたらエースは本当に"死"んでしまう。笑顔を見せてよ。どうしようもない弟だなって頭を撫でてよ。叩いてもいい。殴ってもいいから。冗談だって言えよ。どうして名前を呼んでくれないんだ。どうして目を開けてくれないんだ。どうしてどうしてどうして。


「――――」


声が出なかった、声にならなかった。大切な誰かの"死"を実感したことがなかった。だって大怪我をしたとしても、生きていてくれたから。だから笑えた。だから泣けた。なのに今の自分には、涙が少しも出ない。どうやって泣いたのか忘れてしまったかのように。胸が苦しい。声が聞きたいよ、エース。

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