二代目海賊王が処刑されてから10年、かつての仲間達はまだ船旅を続けていた。みんな一度は故郷へ戻り、それぞれの人生を歩もうとした。けれど太陽がない道を、どうやって進めばいいのか分からず、結局また航海をしようということになったのだ。彼らの時間は船長であるモンキー・D・ルフィが処刑されてから止まったままだ。何も伝えられず、何も出来ず。彼が処刑されるのをただ見ていた。もっと伝えたいことがあったのに。もっと一緒に過ごしたかったのに。けれど全員の願いは、もう届くことがない。遺体もすべて海軍が引き取ったのだから。ルフィの死後、彼の祖父であるガープに連れられ、とある島に行った。そこにはルフィの追悼碑があって、死体は埋めてないとのことだった。何処にあるのか言い寄ったが、結局分からず仕舞い。友人であるコビーに聞いたが、知らないの一点張り。けれど時が経ち、頭の片隅にそれらを閉じ込めて、彼等はずっと旅を続けていた。あの日までは。


「随分と食料が安いわねぇ」
「そりゃそうさ、海賊の数が減ってきてるもの」


ナミの独り言に店屋のおばちゃんはそう答えた。二代目海賊王が処刑されてから、海賊の数は徐々に減少していった。理由は二代目のあまりの強さと、それを打ち負かした海軍の脅威に恐れをなしたから。まあ海軍も人手不足で減少傾向にあるが。残っている海賊はレッドラインの向こう側にいる強者ばかり。そこまで辿り着こうとする冒険者は、なかなかいない。


「…平和なのは良いことだけど」
「やっぱ物足りなねぇなぁ」
「海軍も追ってこないし」
「海賊にも合わねぇし」


それぞれが息をそろえて不満を口にする。昔は島に上陸するたびに追われ、必死で逃げ回っていた。気に入らない海賊にも出遭い、そのたびに戦闘になった。けれどかつて恐れられていたグランドラインは平和そのもの。海王類がたまに姿を見せるが、それでもつまらない。いるのは小物ばかりで、度胸もまるでないし。


「お前達、海賊か?」


突如として頭上から声が降ってきた。ナミとサンジ、ウソップ、チョッパーは買い物袋を片手に空を見上げる。するとそこにはフードを目深に被った少年が、建物同士を繋ぐ線の上に立っていた。逆光で顔は見えないが、声からしてまだ幼いようだ。


「確かに海賊だが、それがどうした」
「お前らの船の船長は?」
「……いねぇよ」
「そっか」


まるで意図が読めない彼の言葉に、サンジは苛立ちを露にした。それは彼だけではなく、ナミやウソップもだ。彼等に船長はいない。それは過去形であるのと同時に、現在進行形でもあった。また旅をしようと決意した日、誰が船長になるか決めようとした。けれど結局、決められなかったのだ。船長は、ルフィだけだから。彼以外の者を船長にすることなんて出来なかった。その気持ちを知ってか知らずか、少年は身軽に地上へ降りる。そして徐にフードを取った、瞬間。誰もがあまりの驚愕で、言葉を失った。


「んじゃ俺が船長になってもいい?」
「……ル、ルフィ!?」


それはまさしく彼らの船長、モンキー・D・ルフィだった。


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1.生まれ変わり
2.黄泉がえり
3.実は生存
このどれかにしようかと思ったけどご想像にお任せ(笑)

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