情報屋なんてやってたらさ、色々な職業の方々と面識を持つ訳だ。つい先日なんて動物の密猟業者と、何とまあ動物園の園長との間を取り持った訳。びっくりするだろう?国民が愛すべき憩いの場所が、そんな大人の汚い事情で埋め尽くされているなんて。まあ情報料も弾んで貰ったし、プラスアルファ口止め料も戴いたからね。初めから情報を漏らすつもりはなかったけれど。

それにしても人の好意は受け取って損は無いよねえ?オマケは動物園のチケット二枚だった。金なんかよりもずっと実用的だと思う。これでシズちゃんと二人きりでデートが出来ると思うと天にも登る気分だったよ。まあ、それでも…、

「シズちゃぁーん…」

「ちょ…、もうちょっと待ってくれ…」

二人プラス夥しい数の動物達の間違いだったけれども。

「ずっと見てて飽きないの?…ライオンなんて」

シズちゃんはライオンの檻の前から一向に動こうとしなかった。それももう二十分程である。俺は何度もシズちゃんのバーテン服の裾を引っ張ってみるが、びくとも見向きもしてくれない。

「…っ!! 動いた!!動いたぞ臨也!!」

「あー、はいはい。そりゃあ生きてるんだから動きますよー」

シズちゃんが執心している子ライオンは…、先日(と言っても結構前だが)愛でたく御出産されたらしい。形容するなら、よろよろとかコロコロとした動きを繰り広げている。俺も可愛らしい動物には素直に可愛いと思いたいんだけど、こうもシズちゃんがそちらばかりに気を取られていると寂しいと言うか何と言うか…。

「シズちゃーん…」

「……っ可愛い、ヤバい」

「シズちゃーん…?」

「持って帰りてえ…、可愛いな…」

もうシズちゃんの心はライオンの子供に骨抜きにされてしまったらしい。俺の声なんて、まるで耳に届いていないようだ。それは俺にとっては凄く凄く面白くない事で…。

「ホント可愛いなあ…」

でも、「可愛い」を連呼するシズちゃんの横顔はとても可愛かった。シズちゃんは俺がまじまじと顔を覗き込んでいる事にも気付いていない。へえ、シズちゃんってこんな表情もするんだ…。

「シズちゃん」

「ん?なんだ…っぅん!?」

俺はシズちゃんに最大限まで接近していた。そんな事にも気付けなかったシズちゃんは…、振り向き様に自らの唇を進んで俺に差し出す形となったのだ。俺はその期に乗じて一気にシズちゃんの細くて高い位置にある腰を引き寄せる。

「ふ…っぁ、んんぅ…っ」

喘ぎの合間に開いた口内に舌を忍ばせ、俺はシズちゃんの熱い頬壁を陵辱した。舐め回した。蹂躙しつくしてやった。ビクビクと震える舌を、唾液を絡ませ愛撫する。

「…っざや、やめろぉ…っ」

ガシリとシズちゃんに肩を掴まれ、力強く体を離された。シズちゃんは特異体質の所為で俺の何倍も力が強いからね。…あーあ、今日はここまでか。俺は殴り掛かってくると思われる彼の拳の一振りを避ける為に、現在位置から三歩ほど体を後退りさせた。だが…、

「………っ」

「…?シズちゃん?」

そこに居るのは俯いて強く握った拳を戦慄かせているシズちゃんだけだった。戦慄かされた拳は今にも此方に飛んで来そうなものなのだが、シズちゃんは何のアクションも起こそうとしない。墓穴ではあると思うが…、俺は再びシズちゃんとの距離を縮める。いつでも逃げられるように半身を引きながら。しかし、それは杞憂に終わる。

「ぁ…、こういう事は…っ、二人っきりの時にしろよな…!!」

それだけ言うとシズちゃんは身を翻し、漸く足を進め出した。俺は一定の距離を保ちながら、シズちゃんの後ろを付いて歩く。

…ん?元より此処には俺とシズちゃんの二人だけしか居ないのに、どうしてシズちゃんはこれ程までに恥ずかしがっているのだろう。と、そんな事を考えていると、直ぐ横でライオンの喉を鳴らす音が聞こえてきた。ああ、動物達がいるから二人きりじゃないって言う事か。

俺はシズちゃんに襲い掛かりたい気持ちを必死で抑え、平常心を保つ為に深呼吸をした。檻に幽閉される動物達の一匹一匹を睨み付けながら散策を続ける。…この時ばかりは俺の邪魔をする動物達の存在が本当に憎くて憎くて仕方が無かった。


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怪獣のバラードのかつねさんに相互記念として頂きました。
動物に嫉妬する臨也というリクエストをさせていただいたのですが、何ですかこの可愛い生き物はぁあぁぁあ!子ライオンを見る静雄が可愛すぎて悶え死にそうです!可愛いって言っているお前が可愛い!
そしてそれに嫉妬する臨也さんも大好きです!何だかんだでラブラブな二人が好きすぎてもう…!
暗い話ばかり書いているので、こうしてかつねさんの甘々な話を読ませていただくと、心が安らぎます。というかゴリラと石を投げて戦う臨也も見てみたかったです(笑)
本当にありがとうございました!

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