臨也、静雄が罪歌の子
病み…かも知れません
グロくはないですが血の描写有り


親は子を産み、子は更に子を産んでいく。母体は孕んだ子を愛し、慈しみ、そしてこの世に産み落とすのが、それが極々自然の摂理である。元はと言えば同じ子宮から産まれた者同士。お互いを愛し合うのは当然の事なんだ…と、ざっとこんな感じの事を罪歌は俺に言い聞かせた。俺はその話の意味が解らなかったけれど、多分それは俺に臨也を愛せと言っているんだと思った。

罪歌に言われた通りに臨也を愛したら、臨也も俺の事を沢山愛してくれた。

「シズちゃん…、シズちゃん…?」

「やぅ…っ、あ…ははは、何だよ臨也ぁ…?」

深夜、電気を消して窓から差し込むネオンの光をカーテンで遮断し、俺達はお互いを愛し合った。臨也の事務所のフローリングの床に座り込み、ただひたすらにお互いを愛し合っているのだ。まるで夢みたいな光景だ。臨也が俺を愛してくれているだなんて…。臨也が俺を愛する度に、俺の中の罪歌がけたたましく歓喜の声を上げる。臨也が俺を愛する度に、俺の体は快感に震えを催した。

「ずーっと俺の事好きだったの…?」

そう言う臨也の瞳は愛おしかった。幼子が母親に純粋な疑問を問い掛けるような、そんな瞳。まるで「虹はどうして七色なの?」と問うているようだった。その問いにコクリと頷くと臨也は更に俺を愛してくれた。

「んぁ…っ、臨也ぁ…あっ」

「はは、シズちゃん可愛いー」

俺の体の結晶が、雫となって伝い落ちる。
俺は臨也が好きだった。けれど俺は肉体的な力に反比例して、精神は人一倍臆病だった。あの日も俺は池袋に来ていた臨也と喧嘩して…。

そして自分に嫌気が差したんだ。

俺は臨也の事が好きなのに、何故喧嘩でしかアイツと付き合えないんだろう。喧嘩をする事でしかアイツとの接点が無いなんて…、そんなの最高に皮肉過ぎる。そんな事を考えている時、俺は背後から見知らぬ男に衝撃を与えられた。

"静雄、静雄…。会いたかったわ…。随分と悩んでいるみたいね…?"

その声は腰の辺りから疼くように聞こえてきた。その時、俺は一瞬だけ恐怖を抱く。男は逃げて行ったにも関わらず、路地にはもう誰もいないというのに声は俺の脳内を侵していった。少量の出血箇所は酷く傷みを帯びている。痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い。

" 折原臨也が好きなのね?でも私は彼が大嫌いだから愛せないわ…"

そいつの声が罪歌であるという事を俺は瞬時に理解した。数ヶ月前に池袋を騒がした切り裂き魔の正体である、と。罪歌の事はあの事件の後にセルティから詳しく聞いていた。まさか妖刀なんて物がこの世に存在するとはな。でも不思議とその事実は俺の中にすんなりと受け入れる事が出来た。…そりゃあセルティと仲良くしてたら多少の事があっても驚かねえよ。

"だから…"

その時、地面に煌めく物体を見つけた。それは皮肉にも、数日前に俺が臨也に向けて投げたカーブミラーの破片である。吸い寄せられるように屈んでその破片を拾い上げた瞬間、何かが俺の中を駆け巡った。

"その刃で彼を愛しに行きなさい"
"ほら、その破片を彼に差し込むのよ"
"辛いんでしょう?"
"苦しいんでしょう?"
"私は彼を愛せないけれど"
"貴方は彼を愛してあげられるわよ…?"

そして俺は元来た道に体を翻す。自慢じゃないが俺は臨也を見つけ出すのが得意だ。きっとこの先にアイツがいる。きっとあそこを曲がった先にアイツがいる。きっと、きっと…!!

"臨也ぁぁあ!!"

叫んだ先には臨也がいた。臨也はバツの悪そうな顔をしながら身構える。

" うわ、もう見つかっちゃった…。好い加減にしてよね…、ほんと"

臨也はジャケットの袖から折り畳み式のナイフを取り出すと巧みな指遣いでクルクルとそれを弄ぶ。そして刃先を俺に向けた状態で懐に飛び込んで来やがった。その行動は俺にも先が読めていた事で…、しかし俺は敢えて避けずにその刃を腹筋で受け止めてやる。その代わりに俺は臨也の細い手首をガシリと掴んだ。

"っ、シズちゃ…がはっ!!"

そして俺は臨也の鳩尾にミラーの破片を突き立てた。直後、驚くべき快感と解放感で全身が満たされていった。まるで俺の愛が臨也へと注がれたような感覚である。臨也は暫くは血を流してその場に倒れていたけれど、次に目を覚ました時は綺麗な赤い目で俺を見つめてきた。そして…、

"シズちゃん、…愛してるよ?"

ああ、俺が一番聞きたかった言葉だ。

「シズちゃぁーん?考え事?」

「ひぁ…んっ、わり…ぃ…」

「" ひぁ"だって。可愛いー」

回想から意識を戻した刹那、不意にトラックの明るい光が部屋に差し込んだ。俺はその光に照らされた臨也の顔を見つめる。…少しだけ肌が白くなったか?いや、それでも頬は紅潮しているんだ。それに、目も赤く光っている。青ざめた顔に明確な赤はとてつもなく綺麗だった。続けて俺も臨也に愛を刻み込む。

「シズちゃん…、もっともっと俺を愛してよ?俺もいっぱいシズちゃんを愛してあげるから…っ」

「ん…っ、何言ってんだ?そんなの当たり前だろ?ばーか…」

「あはは…、嬉しい…なぁ…」

徐々にか細くなっていく臨也の声色。俺は臨也に言われた通り、そのまま臨也を愛し続けた。臨也は嘸嬉しそうな顔をすると、ベチャリとフローリングに倒れ込んだ。その綺麗な赤い目を半分だけ開いたまま…。

「臨也…ぁ?」

「はぁ…、はぁ…、シズちゃ…っ」

ベチャリ?その音は酷く薄気味悪く室内に響き渡る。臨也が荒い呼吸をする度に、その水音はピチャピチャと不愉快な音を立てた。…いつの間にフローリングは真っ赤な何かで埋め尽くされていたんだ?

「シズちゃん…、見て?…これ、俺達のが混ざり合って出来たんだよ…?」

「あ…、ホントだ…」

臨也がソレを指で掬い、これ見よがしに艶めかしく舌で舐めて見せた。その独特の匂いから、ソレが血液であると漸く理解する。血なんてグロテスクで良い気はしないが、それでもやっぱり俺とコイツのが混ざり合ったものだと思うと、この血溜まりでさえも愛おしく感じた。俺も臨也の真似をして舐めてみよう。…それは甘い蜜と間違えてしまうような味だった。

「シズちゃん…、もっと俺を愛して?もっともっと愛を頂戴よ…?」

「臨也も…、俺に、もっともっと…!!」

臨也が愛を求めるので、俺も更に愛を求めてしまう。臨也はヒューヒューと息をすると、弱々しい細い腕で全体重を支えて起き上がった。俺の頬に手を伸ばし、先程までずっと俺を愛してくれていた刃物を首筋に添えてくる。臨也の目が俺に何かを告げている。それは俺にも同じようにしろと言っているように見えたので、俺もカーブミラーの破片を臨也の首筋に当てがった。

「一緒にイこうか…、シズちゃん…?」

「うん、解ったから早くぅ…、臨也…っ」

「シズちゃんは堪え性が無いなあ…」

俺は少しだけ鏡の破片を強く握ると、臨也を愛する為の準備を整えた。そんな俺を見て臨也はクスリと笑うと、その赤い目を三日月の形に細めさせた。そして臨也の目にはしっかりと俺の顔が映っている。…あれ?俺の目も臨也と同じで赤かったんだ。俺は初めて自覚した。

「じゃあ行くよ?」

臨也がそう問うと、俺はコクリと首を頷ける。ああ、臨也。俺達…、

「いっせーのーで…」

これで永遠に一緒だな。


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怪獣のバラードのかつねさんに頂きました!
罪歌について話をした際に『罪歌同士で愛し合ったらどうなるのか』という疑問から生まれた話だそうです。
そんな素晴らしい発想が出来るなんて尊敬します…。
というか臨也と静雄がどうしようもなくえろいです。
何ですかこれは私の頭がおかしいのですか。
罪→静が公式なだけで満足でしたが、こうして他の方が書かれた話を読むと、もう天にも昇る思いというか何というか。
感謝を言葉で表現出来ず、申し訳ありません!
ですが本当に嬉しいです!ありがとうございました!


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