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▼ 教えて先生A

隣の席の女の子に、告白をされた。少し恥ずかしそうに僕を好きだと言うその子は、何だかキラキラして見えた。

僕なんかを好きになってくれてすごくすごく嬉しかったけれど、僕は彼女の気持ちに応えることはできないんだ。

ごめんなさい。そう返事をしたときの彼女の顔は、きっとしばらく忘れられない。

誰かの気持ちを受け止められないのは、とても辛いなと思った。

――上記のようなことをつらつらと拙いながらも口にする。放課後、すっかり人気のなくなってしまった化学室でのことだ。

彼は実験で使っていたビーカーを洗う手を止め、こちらを振り返る。

「佐倉は、どうしてその話を俺にしたんだ?」
「え…」

どうしてって、それは。

「あの…」

僕の先生が好きだという気持ちが揺らぐことは決してないけれど、彼女からの告白で改めて「愛する」気持ちについていろいろと思うことがあったのは事実だ。

誰かから好意を向けられることはすごいことで、とても尊いことで、でもすごく怖いことで。

そんな怖い僕の思いを受け止めてくれた先生には、とても感謝している。

どう言えばそれが伝わるかな、と言葉を慎重に選んでいると、先生は少しだけ眉をぴくりと動かした。

「告白されて嬉しかったことを、わざわざ言いに来たのか?」
「え、いや、そうじゃなくて」
「俺にどう言ってほしいんだ。他の人の気持ちに悩んでいるお前を見て、俺がどう感じるか考えなかったのか?」

いつもは口数が多くない彼が口を挟む隙も無いくらいに喋るのを目の当たりにして、驚くと同時に混乱する。

…先生、怒ってる。

自分のどの部分が彼の逆鱗に触れたのかも分からない。どうしようどうしよう。僕はただ、先生にありがとうって言いたかっただけなのに。

彼の指が、僕の頬をつっと撫でた。水を扱っていたせいで冷たくなってしまったその感触に、反射的に身体が震える。

「…嫌か」
「い、嫌なわけ、な…んっ」

突然後頭部を引き寄せられ、唇が合わさった。その直後舌が入り込んでくる。

「ん、ぁ、んん…」

冷たい指先とは裏腹に、彼の舌はとても熱くて。絡めとられるような濃厚な口付けが思考をとかしていった。媚びているような甘い声が鼻に抜ける。

「ふ…っあ、う…ん、ん」

もう先生のことしか考えられない。ぎこちない動作でこちらからも舌を伸ばせば、一層激しくなる口付け。唾液が口内に溜まって音を立て、その卑猥な響きに頬が熱くなった。恥ずかしい、けど、もっと欲しい。

「あ…」

欲しいと思った瞬間、濡れた音とともに唇が離されてしまう。名残惜しさに思わず声を上げると、彼は少し笑った。

「…お前は魔性の男だな」
「魔性…?」
「分からないか?俺は今嫉妬してるんだよ」
「し、嫉妬?なんで…」
「お前がわざわざ告白されたなんて報告してくるからだろう」
「ちがっ…その、嫉妬させようとか、そういうことじゃなくて…」
「違うのか?」

違う。そんなつもりは毛頭ない。大体先生に嫉妬などという感情があったことが驚きだ。

先生は大人で、余裕で。僕のことを大事にしてくれているのは十分すぎるくらい知っているけれど、気持ちの大きさを比べたら僕の方がずっと大きい。

「僕は…先生に、ありがとうって、言いたかったんです…」
「ありがとう?」
「告白されて嬉しかったのは事実です。でも、僕はそれを受け止めることが出来なかった」

誰かが向けてくれた真剣な気持ちを自分の都合で突っぱねなければならないというのは、とても辛い。でもそれよりもさらに彼女の方がきっと辛い。

僕はたまたま運が良かっただけなのかもしれない。先生を好きになったから、先生が相手だったから、なんとかこうして今幸せな気持ちでいられるのかもしれない。

「僕の気持ちを受け止めてくれた先生は、どれほど覚悟しなきゃいけなかったんだろう…って。僕のためにそこまでしてくれてありがとうって、そう言いたかったんです…」

お前なぁ、と彼が呆れたような声を出した。ちょっと鬱陶しいことを言ってしまっただろうかと不安になっていたら、強い力で抱きしめられる。

「こちらこそ、俺のことを好きになってくれてありがとうな。こんなに尊い気持ちを教えてくれてありがとう」
「…せんせい」

――嬉しい。先生、大好き。

胸の奥がきゅっと苦しくなる。彼の胸に頬を擦り付けると、白衣に染みついた独特な匂いが鼻をくすぐった。そのせいか別の感覚まで呼び覚まされてしまう。

…どうしよう、今、すごく、先生に触りたい。

「…せんせ、僕、その…」
「分かってる」

準備室に行こうか。

彼の言葉に、僕はゆっくりと頷いた。



「…っん、あ…、あ」
「平気か?」
「へ、へいき、だから」

早くもっとこの疼きをどうにかしてほしい。涙で滲む視界の中、必死で手を伸ばす。彼は口元を弛め、伸ばした手を優しく握り締めてくれた。

丁寧に時間をかけて慣らされた後ろはもうどろどろだ。彼のものを奥まで咥えこんでいるにも関わらず、そこに苦しみや痛みはない。あるのは快感だけだ。

「…もう、動いても大丈夫?」
「ん、ん、うごいて、せんせ」
「声、頑張って抑えような」
「は、はい…っ」

ぎゅう、と目の前の白衣に縋り付く。小刻みに腰を揺すられ、びりびりとした甘い熱が全身に広がっていった。

「んっんっ、ぁ、あ、ん」
「可愛い、佐倉」
「やぁ、ん、いわ、いわないで…っ」
「はは、中すごいことなってる」

僕とは違い、先生はまだまだ余裕の表情だ。声を抑えろと言ったのは彼の方なのに、まるでもっと喘げとばかりにぐいぐいとその先端で襞を抉られる。

「ああっ、だめです、んんぅ、そこ…こえ、出ちゃ…」
「ん…でも、気持ちいいだろ?」

気持ちいいから駄目なんだと分かっているくせに。普段とても優しい彼が、こういうときにだけ見せる意地悪な部分に、僕はたまらなくドキドキするのだ。

腰を突き入れられるリズムに連動して、乗せられた机が小さく軋む音がした。彼が普段仕事をしている場所でこんなことをしているという背徳感のようなものが、快感を増幅させる。

「っひ、あ、あぁ、んっん、ふぁ」
「はぁ…っ」
「やっ、せんせ、はなすの、やだ…!」

繋いだ手を解かれるのが嫌で、すすり泣きながら首を横に振った。少し息の乱れた先生が、大丈夫だと笑ってキスをしてくれる。

「離さないから、大丈夫」
「んっんぅ、せんせぇ、すき、すきです…っ、だいすきぃ」
「あんまり可愛いことを言うな」
「あぁぁっ!」

ぐ、と身体を倒され、角度の変わったそれがますます奥に入り込んできた。すぐ近くで彼が呻く声が聞こえる。

「佐倉、声」
「だって、だって、先生が…っん、んぅ」

こんなことをされて声を出すなと言うのはあまりにも無理なお願いだ。掌で口を覆い、さらにその下で唇を噛み締める。

「んっんっん、んん、ふ…んんん!」

あぁ、もう、気持ちいい。ビクビクと腰が勝手に跳ね、彼のお腹に自分の性器を擦り付けた。ぬるぬるになったそこを突然握られる。

「っ、やらしいな…こんなにヌルヌルにして」
「んぅ、ん、ふ、んっんん」

だめ。そこを触られたら、すぐに達してしまう。目で訴えかけてみるも、彼はゆっくりとそれを扱き上げ、さらに一層腰の動きを激しくさせる。耐え切れずに声を上げた。

「だめ、いく、いく、せんせ…っいっちゃう」
「あぁ…いいよ」
「あ、あ、あっ、ん、ひぁ、あ!」

その細くて繊細な指が、いやらしく蜜を零す先端を何度も翻弄する。強すぎる快感をどう発散していいか分からなくなって、必死で身を捩った。ガタリと机の上のペン立てが倒れる。

「こら、逃げるな」
「やっあ、せんせぇ、きもちよくて、おかしくなる…っ、ん、もう、もう」
「いいよ。おかしくなった佐倉が見たい」
「あぁっ、そん、な、ぁっう、あ、は…!」

ぐっぐっと感じるポイントを切っ先で突かれ、背中を反らして悶え喘いだ。いっちゃう、いっちゃう、と掠れた声で何度も訴えかける。先生は僕の膝を抱え上げ、ガタガタと音をさせながら激しく腰を突き入れた。

「んぁ、あっ、は…ぁ、んぅ、んっ―――!」

彼の唇が口を塞いだその瞬間、溜まりに溜まった熱が一気に放出される。頭が真っ白になって、何も考えられない。かろうじて彼の体液が後ろに広がっていく感覚だけを感じ取った。

「…佐倉、好きだよ」

そんな囁き声が聞こえる。

――誰かを好きになるのは、怖いこと。でも、とても尊くて素敵なこと。こんなにも穏やかで温かい気持ちを与えてくれる人に会えたことは、僕のこれまでの短い人生の中でも一番の幸せだ。

「ぼく、も…」

好きです。

心の中で返事をしながら、僕は押し寄せてくる白い世界に身を任せ、そっと目を閉じた。


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