シック・ラバー | ナノ


▼ 06

「さっさと立てって」
「うぇー…めんどい…」
「お前が出した液なのに」
「液とか言うなっばか!」
「いや何かもういろいろ出てたじゃん」

涙とか涎とか先走りとか精液とかな。あと汗もかな。さすがに扇風機もつけず冷房もなしの部屋でやるのはキツイということが分かった。

「風呂入りたい」
「後で。っていうか最後に入るって怒鳴ってたの自分だろ」
「だって汗が気持ち悪い…」
「一緒に入る?洗ってやるよ」

ちゅう。汗で湿る額にキスをされた。ひふみは結構キス魔だと思う。

「…無理だろ」

大の男が二人で風呂に入るのは、いくらなんでも不自然すぎるわ。

「俺ん家こっそり来ればいいじゃん」
「いいの」
「いーよ。でもまずはコインランドリーな」

分かってるよ。渋々ベッドから下りた。



「…閉まってんじゃん」
「ここ、24時間じゃなかったっけ」
「さすが田舎…」

家から一番近いコインランドリー。わざわざ暗い夜道を歩いてやってきたのに、既にシャッターが下ろされている。ふざけんなよ。普通コインランドリーっつったら24時間営業だろ。

「はー…明日洗うしかねぇな」

今日はシーツ無しで寝るか。まぁ、床とかソファとかで寝てもいいけど。夏だし冷える心配もない。

「じゃあ風呂入りに来るついでにうち泊まれよ」
「えっ」
「多分うちの親もう寝てるし。ばれないばれない」
「…でも、朝起きて俺がいきなり居たらひふみのかーちゃんびっくりするんじゃね。それに、悪いし」
「今更。…むしろ瑞貴に久しぶりに会って喜びそう」

じゃあ泊まろうかな。呟いた俺の手をひふみの手が握る。

「お前手冷たっ!冷え性か!」
「瑞貴」
「なんだよ」
「俺も」
「はぁ?」

急にどうした。わけわからん。主語を言え、主語を。怪訝な顔をすると、奴は不細工だなと相変わらずの暴言を吐いた。

「なんなんだよ!」
「瑞貴と一緒に帰って来れて嬉しい」
「…」
「瑞貴の家族に会うの、ちょっと怖かったけど。でも相変わらず明るく優しく迎えてくれて、安心した」
「…そ、そーかよ」
「あと」
「う、わ…っちょ」

突然腕を引っ張られてバランスを崩した。転びそうになる体が、ぎゅうっと抱き留められる。

「俺のことでいちいち泣いたり笑ったりする瑞貴が、死ぬほど好きだなって思った」
「…泣いてない」
「いや超泣いてたじゃん」
「忘れろ!!」
「嫌だって。それよりさっきの…すきって、俺のひふみって、もう一回言って」
「はぁ!?い、いま?ここで?」
「うん」

道端で一体何をやってるんだろう、と思う。馬鹿みたいに心臓がどきどきして、きっと俺の顔は真っ赤だ。でも、暗闇じゃ何も見えない。誰も見ない。ここには俺たち二人しか、いないから。

自然と口が開く。結局俺は、ひふみに勝てっこないんだ。

「ひふみは、お、俺の…俺の、ひふみ」
「うん」
「俺も死ぬほどひふみのこと、好き。大好…っ」

無理矢理上を向かされ、甘い甘い口付け。くらくらする俺の耳に、ひふみの声が響く。

「あー…ムラムラしてきた。俺ん家ついたらもう一回しよ」
「…え?」
「シーツ汚れると嫌だし意味ないから、風呂で」
「は?」

夜は、まだ長い。

「声出すなよ。響いたらやばい」
「い、いやだ…風呂は嫌だ。絶対無理」
「お前に拒否権なんかねーよ」
「いやだぁぁぁぁぁ!」

どうやら俺は、今晩も寝かせてもらえないらしい。

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