ひ「八名川ってさ、自分のこととてつもない美形だって思う?」
八「まぁ一応は……とてつもないかどうかは置いといて」
ひ「やっぱ美形で良かったーってなる?」
八「そりゃ得なことの方が多いでしょ」
ひ「例えばなにさ」
八「鳴瀬を落とせたこと」
ひ「それ顔のおかげなの」
八「いやー、大事大事。あの硬派な男に色仕掛けが通用する顔って貴重だよ?」
ひ「色仕掛けって」
八「この顔じゃなかったら、迫る勇気も無かっただろうし」
ひ「八名川のその自信に溢れた態度は、外見に裏打ちされたものだったってこと?」
八「冷静に分析しないでよ」
ひ「確かに鳴瀬って八名川の顔好きだよね」
八「ほんと!?」
ひ「声でか」
八「いや実感としてはもちろんあるんだけど。傍から見てもわかるのは嬉しいよね」
ひ「そもそもその顔嫌いな人いないでしょ」
八「そうでもないよ。嫌いだし二度と見たくないって言われたことあるし」
ひ「元カノか……」
八「ちょっと。決めつけるのやめて」
ひ「違うの?」
八「合ってる」
ひ「そうなんじゃん!」
八「なんで急にそんな質問してきたの」
ひ「んー……」
八「何?前話ふっといてやっぱ無しでってのは駄目だからね」
ひ「……聡太郎もさ、すんごい可愛いじゃん?」
八「そうだね。誰が見ても可愛いと思うよ」
ひ「でもあんまり自分の顔好きそうじゃないなーって。いろいろ嫌な目にあってるから当然だろうけど」
八「うん」
ひ「それって俺が気持ちを伝えきれてないからかなーとか、そういうことを思うわけですよ」
八「気持ちって?」
ひ「聡太郎は可愛いよって。自信持っていいよって」
八「あんだけ人に見せたくないって隠しまくってる奴がよく言う」
ひ「それはそれ!!」
八「俺も自分の顔が好きかなんて考えたことないかも」
ひ「そうなの?」
八「美人かどうかと好きかどうかは別の話だからね。嫌いではないけど、好きかって聞かれると即答はできないよ」
ひ「俺は普通に八名川の顔好きだけどな」
八「……ごめん、俺には超ラブラブな彼氏が……」
ひ「違う!!俺だって超絶ラブラブハッピーな彼氏がいますう!!恋愛感情は一ミリもない!!ありえない!!」
八「わかってるよ。人たらしだよねぇ、全く。俺が村上だったら、守山に首輪つけてるよ」
ひ「ヤバすぎるでしょ」
*
八「あ、見て。守山いるよ」
聡「……何やってるんだアイツ」
八「なんだろ。なんか走ってるね」
聡「……」じっ
八「……かわいいねぇ」
聡「……あ……悪い。何か言ったか?」
八「そんな可愛いのずるくない?大丈夫?」
聡「は?」
八「目きらっきらしてたよ。恋する目してた」
聡「なんだよ急に……」
八「可愛いね」
聡「お前の方が可愛いだろ」
八「顔の話」
聡「顔も、八名川の方が可愛い」
八「えぇ?そう?俺と村上じゃタイプが違うじゃん」
聡「俺はお前の顔の方が好き」
八「もーなんなのこのバカップル揃って人たらし」
聡「?」
八「俺じゃなかったら勘違いしてるよ」
聡「勘違い?」
八「天然タラシ怖い。俺の周り天然タラシしかいない」
聡「俺は違う。タラシじゃない」
八「違くない。今俺のこと好きって言った」
聡「それは、恋愛感情じゃなくて」
八「じゃなくて?」
聡「……ともだちだから」ぼそ
八「……」
聡「な、なんだよ。何か言えよ」
八「守山ー!守山ー!村上がかわいいよどうしよう!?」ガラッ
聡「ちょ……っ、なにしてんだ!」
ひ「そうちゃんが何て!?」はぁはぁ
聡「!? は、早……っ」
八「どうするよこの子。首輪つけとく?」
聡「!? く、首輪……!?」