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15th Jan 2021

小ネタ

津「……はい。はい。わかりました。いえ……では」ピッ

津「ごめん。今日は先に出るから、何かあれば携帯に連絡してください。今日中に見ておかないといけない書類があるなら、今見るよ」
小「あ……あります」
津「見せて」
小「はい。これなんですが」
津「……」カサ
小「この件、明日には部長に入れたいなと思っていて」
津「んー……前回から変わってるところは?」
小「数字は時点修正加えてます」
津「わかった。明日の朝一で入れよう。時間押さえといて」
小「わかりました」
津「うん。あと、過去5年の数値を表にまとめといてくれると助かる。こっちの手持ち用でいいから」
小「はい」
津「バタバタで申し訳ない」
小「いえ……お気をつけて」

伊「津々見課長、こちらです」
津「伊原室長」
伊「突然すみません。部長が不在でどうしても都合がつかず……」
津「いえ、構いません。社長は?」
伊「先に中へ」
津「では私がここで先方を待ちますから、室長は行ってください」
伊「でも」
津「先ほどからずっと着信があっているようですし」
伊「……すみません」
津「(社長だろうな)」



望「遅くまでありがとう。助かった」
津「いえ、お疲れ様でした。いい方向に落ち着きそうですね」
望「ああ」
津「(この時間なら電車は……もうないな)」チラ
望「津々見課長は電車だったか。この時間だと、もう終電には間に合わないんじゃないか」
津「タクシーで帰るので構いませんよ」
望「もう来た」
津「え?」
望「乗って」
津「いや……」
望「いいから」
津「……では、お言葉に甘えて失礼します」バタン
伊「ご自宅か、最寄り駅か……どこでも構いませんよ。どの辺りまで行きましょう?」
津「駅でお願いします。すみません。申し訳ないです」
伊「かしこまりました」

望「ふー……疲れた」
津「やっぱり向こうも探り入れてきましたね」
望「探られて痛い腹はないが、ああいう会話はどうも神経をすり減らすばかりで好きじゃない」
津「でも、最終的にはいい形になりそうです」
望「津々見課長を連れてきて良かった。まさか向こうの担当が課長の級友だったとは」
津「ええ、最初は気づきませんでした」
望「向こうは顔を合わせたときから気がついていたようだったが?」
津「そうですね、貸しはあるかもしれません」
望「貸し?」
津「内容はもう忘れました」にこ
望「ふふ、そうか」
津「(この人のことだから、最初から俺を呼ぶつもりだったんだろうけど。部長になんて説明するか……)」
望「部長にはこちらから話しておく」
津「……お気遣い痛み入ります」

津「ここで大丈夫です」
伊「はい」
津「お言葉に甘えてしまって申し訳ありません。助かりました」
望「こちらの都合で呼び出したんだ。気にしなくていい」
津「私でお役に立てることなら何でも」
望「頼りにしている」
津「ありがとうございます」
伊「お気をつけてくださいね」
津「……」
伊「津々見課長?」
津「……最後に一つ、差し出がましいようですが、これだけはお伝えさせてください」
望「?」
津「部屋に入るタイミングを伺うのって、結構大変なんですよ」
望「……」
伊「……」
津「客人に社長と秘書のキスシーンを見せるわけにもいきませんから。覗きみたいな真似をさせるのはやめてくださいね」
伊「あ……っ」
望「ははは!」
伊「ちょっと何笑ってんですか坊ちゃ……、社長!」
津「業務に支障がないなら私は別に構いませんが、若手にあんな場面見せたら大変ですよ。セクハラ待ったなしです」
望「悪かった」
津「頼りにしてくださるのは大変光栄ですが、そういう頼り方は御遠慮いただきたいですね」
伊「か、返す言葉もありません……」
津「……同じ穴の狢ってご存知ですか?」
伊「え?」
津「いや、もっと簡単ですね。似た者夫婦」
伊「ふ、ふうふ……?」
津「お疲れ様でした。社長と室長もお気をつけて」バタン

伊「……すごい人ですね」
望「ああ。もっと上に行かせたいんだが、まだ若いしな……やっかみを受けさせることになる」
伊「内部での揉め事は、悪化させると後々面倒ですからね……」
望「まぁ、彼は黙っていても上がっていくだろうし。この先一緒に仕事ができるのが楽しみだ」




津「(あれだけ言っておけばいいだろう。今はまだ、このポジションが楽しいし。昇任は考えられない)」ガチャ
小「おかえりなさい」
津「……小山。来てたんだ」
小「バタバタ出ていかれてたので、面倒事かなと。ごめんなさい、合鍵使いました」
津「いるとは思わなかったから嬉しい。毎日来てくれていいのに」ぎゅっ
小「遅くまでお疲れ様でした。お風呂沸いてますよ」
津「小山はもう入った?」ちゅ
小「いえ、まだ……」
津「じゃあ一緒に入ろう」ちゅっちゅっ
小「はい」
津「脱がせて」ちゅう
小「え」
津「俺も脱がせるから」
小「……はい」
津「手冷たいかも」
小「ん……大丈夫です」
津「ごめんね」
小「あ」
津「ん?」ちゅ
小「部長のスケジュール、明日9時半からで押さえました」
津「……仕事の話禁止」ちゅっ
小「すみません、でも、忘れそうだから」
津「夢中で?」ちゅ
小「はい」
津「そうだね、多分俺も忘れる。朝もう一回言って」ちゅっ、ちゅっ
小「あの……」
津「なぁに?」
小「多いです……キスが……」
津「二人にあてられたかな」
小「二人?」
津「ううん。こっちの話」

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