有「……」ピンポーン
黒「……」ガチャ
有「……」ガッ
黒「……何」
有「俺がどうしてここに来たか、お前が一番わかってるだろ」
黒「……」
有「なんで電話出ないんだ」
黒「悪い。忙しくて気づかなかった」
有「家に入れてくれるだけでいい。レポートでも論文でもなんでも書いてろ」
黒「……」キィ
有「お邪魔します」
黒「本当に構ってやれないからな」
有「わかってるって。キッチン借りる」
黒「どうぞ」
有「(冷蔵庫は……空。買い物してきて良かった)」
黒「……」カタカタ
有「(あの調子じゃまともなもの食べてなさそうだし、米食わせよう……雑炊でもつくるか)」
黒「……」ぐうう
有「(腹鳴りまくってるけど、どうでもいいんだろうな)」
有「黒江、とりあえず飯つくったから腹に入れろ」
黒「ん」
有「……食わせようか？」
黒「ん」
有「！」
黒「……」
有「……はい」カチャ
黒「あ」
有「熱かったら言って」
黒「……」もぐもぐ
有「……」
黒「……」もぐもぐ
有「(餌付け……)」
黒「ふー……」
有「終わった？」
黒「……まだいたのか」
有「お前、いつもこんな生活してるんじゃないだろうな」
黒「いつもじゃない」
有「隈できてるし、顔色も良くない」
黒「今朝帰ってきたから」
有「早く寝ろ」
黒「これ書いたらちゃんと寝る。帰ってきたのも、終わったあとすぐ寝たかったからだし……」うと
有「ベッド行く？」
黒「まとめられるとこまでまとめとかないと忘れる……」
有「瞼落ちてきてる」
黒「……」うとうと
有「はー……」ぐい
黒「……ん……何……」
有「ここ、こっち。来て。俺の脚の間」
黒「……なんでだよ」
有「寝てたら起こしてやるから、ここで書け。寄りかかってもいい」
黒「……」いそいそ
有「(素直……)」
黒「ちゃんと起こせよ」
有「わかってる。邪魔もしない」
黒「……ん……？」
有「……」
黒「……こっちのがいいか……」カタカタ
有「(まさか全部英語で書いてるとは思わなかった……こいつ本当に頭良いんだな)」
黒「……」カタカタ
有「(俺の方が眠くなってきた)」ふあ
黒「……」ごすん
有「！？」
黒「……」
有「く、黒江、大丈夫か」
黒「う……」
有「終わった？」
黒「ん……あとは、起きてから、見る……」
有「そう。おやすみ」
黒「んん……」
有「(上書き保存しといてやろう)」カチ
黒「zzz」
有「(ファイル名……【nemui】って、絶対寝ぼけてただろ)」
黒「zzz」
有「(かわいいな)」ふ
黒「バカ……っ！！僕はバカか……！！！」
有「ん……？」
黒「有栖……っ、どうしよう……」
有「……？」
黒「書き上げた記憶はあるのに、保存した記憶がない……！！ファイルが何処にあるのかもわからない……！！」
有「……」カチ
黒「え……」
有「……」カチカチ
黒「これ……！！これ、これだ……！！」
有「……」
黒「保存しておいてくれたのか……？」
有「……」
黒「そうだったこいつ寝起き悪いんだった」
有「……zzz」
黒「……っていうかなんだこのファイル名……？」
有「ふー……」ちゃぽ
黒「……」コンコン
有「ん？」
黒「……お湯加減は」
有「丁度いいよ。目が覚めた。ありがとう」
黒「……」ガチャ
有「！」
黒「……僕も入る」
有「いいけど……」
黒「……」ざば
有「……」
黒「……」ごしごし
有「……」
黒「……」ごし……
有「……」
黒「……見るな」
有「いや、見るだろ」
黒「見るな！！」
有「怒るなら入ってくるなよ。見られることくらいわかるだろ」
黒「……」
有「黒江？」
黒「……食事もそうだけど……いろいろ助かったから……お礼、言おうと思って」
有「あぁ……それでわざわざ俺の喜ぶことしてくれたわけ？別にいいのに」
黒「そっち、入っていいか？」
有「……いいよ」
黒「……」ちゃぷ
有「……」
黒「……有栖」
有「ん？」
黒「……」すす
有「……どうした？」
黒「……ん」ちゅ
有「……もしかして誘われてる？」
黒「違う」
有「違うのか……」
黒「……こんなに甘やかして、僕がお前無しで生きられなくなったらどうしてくれるんだ」
有「それが目的だからな」
黒「！」
有「俺がなんの見返りもなく尽くしてると思った？」
黒「思っ……てはない」
有「見返り、今要求していい？」
黒「……何」
有「もっと甘えてほしい」
黒「は？」
有「お前、基本的に一人でなんでもできちゃうだろ。いや、できるというか、ある程度無理してでもやり遂げるというか」
黒「まぁ……そうだな」
有「勉強が楽しいのもわかる。だけど、それを平気だと思うな。今は平気でも後で必ずツケがくる」
黒「わかってるよそんなこと」
有「いいや、わかってない。まず飯を抜くな。睡眠をおろそかにするな。そもそも学校に泊まるな。朝帰りするな」
黒「う……善処する……」
有「善処じゃない。やるんだよ」
黒「……」
有「自分で管理できる自信がないんだろ。だから甘えろって言ってる」
黒「……引いてないのか」
有「何が？」
黒「僕、今回割と醜態を晒したと思うんだけど」
有「……もしかして、引かれるのが嫌で連絡しなかったとか言わないよな」
黒「だって風呂入ってないし顔死んでるし、普通嫌だろ」
有「お前が今までどんな女と付き合ってきたのかは知らないけど、そんなことで嫌いになると思うか？」
黒「違う、僕が嫌だって話」
有「何が？見られるのが？」
黒「幻滅されたらどうしよう、とか……考えるだろ」
有「考えなくていい」
黒「考える。……す……好き、なんだから」
有「……はー……」
黒「溜息つくな」
有「どうして今まで無事だったのかが不思議で仕方ない」
黒「無事？」
黒「……」ぽわ
有「身体大丈夫か」
黒「大丈夫じゃない」
有「うん。大丈夫じゃない顔してる」
黒「どんな顔だ」
有「可愛い顔」なで
黒「やめろ」ばし
有「そんなに良かった？風呂セックス」
黒「……ん」
有「……」
黒「なんだその表情は」
有「耐えてる」
黒「……もうしないぞ」
有「わかってる。もう帰るし」
黒「えっ」
有「え？」
黒「いや……なんでもない……」
有「……」ぐい
黒「……」
有「……」ごり
黒「なんでまだ勃つんだよ……」
有「黒江」
黒「嫌だ」
有「あと一回」
黒「一回で終わらないだろ。さっきも同じこと言った」
有「じゃあ二回で我慢する」
黒「増やすな」