小ネタ | ナノ

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11th Jan 2021

小ネタ

上「……」カタカタ
津「……」カタカタ
上「……」
津「……」
上「……」
津「……上原」
上「はい!?」
津「休憩しようか」
上「え、でも」
津「あんまり集中できてないみたいだし」
上「うっ」
津「何か話したいことがあるならどうぞ」
上「……わかります?」
津「顔に書いてる」
上「話したいっていうか……アドバイス聞きたいっていうか……」
津「何?」
上「プライベートなことなんですけど」
津「あんまり聞きたくないけど、いいよ」
上「今気になってる子が、すげぇ小山に似てるんですよ」
津「は?」
上「違います!小山が好きだから似てる子に惹かれたとかじゃないんで!」
津「……それで?」
上「ガードが固いというか、どこまで踏み込んでいいか見極めが難しいというか……そういう意味で似てるんですよ」
津「相手が自分に対してどれくらい好意を持ってるかによるんじゃないの。好きな人なら許すし、嫌いなら許さないよ」
上「嫌われてるわけじゃないはず」
津「抱かせてくれないってこと?」
上「……抱かせてはくれますけど」
津「まぁ、セックスしたからって付き合えるわけではないしね」
上「でも課長は付き合ったじゃないですか」
津「そうだね」
上「小山は最初絶対課長のこと好きでも何でもなかったですよ」
津「知ってる」
上「だから聞きたいんです。小山が課長をどうやって好きになったのか」
津「俺の口から教えると思う?」
上「ですよねー」
津「……」
上「超美人なんですよ。Aちゃんって言うんですけど」
津「……」
上「俺スレンダーが好きで。Aちゃんはすらっとしてて、抱きしめると細くてたまんなくて」
津「うん、そっちも終わりそう?駅で待ち合わせして、どこかでご飯食べて帰ろうか」
上「ちょお!聞いてくださいよ!何電話してるんですか!」
津「うん。うん。大丈夫。愛してるよ」
上「俺しかフロアに居ないからっていちゃつかないでください」
津「上原も連れて行くね。うん。今一緒に残業してる」
上「えっ……」
津「目の前でいちゃついてあげようね」
上「すいませんでした。勘弁してください」



上「んで本当に連れてくるんだもんこの人……」
小「?」
津「自業自得って知ってる?ちゃんとお代は出すし、悪い話でもないと思うんだけど」
上「いや俺……二人と仲良くしたいわけじゃないんで。むしろ引いてるんで」
津「何を今更」
上「それはそうなんですけど」
津「だったら、俺に相談なんかしなければいい」
上「身近に前例があるんだったらまず聞くでしょ」
小「相談?」
津「気になってる子がいるんだって」
小「……男?」
上「女の子。小山みたいな男なんてそうそういないよ」
小「俺みたいなって」
上「もともとノンケな俺が、余裕で抱けるような男」
津「……」
小「俺がどうのっていうより、上原がもともと許容範囲広いんだと思うけど」
上「いやいや、お前は特別だろ」
津「……」
上「ごめんなさい睨まないでください」
津「睨んでないよ。見てただけ」
上「心配しなくても、小山のことを特別に思ってるって意味じゃないですから」
津「へぇ。口説いてるようにしか聞こえなかった」
上「だから!違いますって!」
小「……」
上「んで小山は羨ましそうな顔するなよ」
小「いや、仲良しだなと」
上「仲良しに見えるか?これが」
小「少なくとも、課長はお前を信頼していると思う」
上「えぇ……?」
津「そうだね。振った仕事は確実にこなしてくれるとは思ってるよ」
上「素直に褒められるとなんか怖いんですが」
津「一応感謝はしてるからね」
上「……俺が余計なこと喋らないか見張ってるだけでしょ……」
津「そうとも言う」
上「橋渡しした手前なんも言えないけど、本当に課長でいいの?」
小「……課長でいい、じゃなくて、課長じゃないと駄目なのは俺の方だよ」
上「マジでどうしたらここまで持って行けるんだよ」
津「どうだった?小山」
小「え?」
津「俺のこと、どうやってここまで好きになった?」
上「えっ、さっき教えないって言ってたくせに本人に聞いちゃうんですか」
小「……自分のことをずっと見ていてくれた、っていうのが大きいですかね。何もかもを受け入れて愛してくれて、それがすごく嬉しかった」
上「答えるのかよ」
津「他には?」
上「まだ聞くのかよ」
小「自分のために必死になってくれたことも、嬉しかった。気がついたときにはもう、取り返しがつかないくらい気持ちが大きくなってたというか」
上「あ、もう惚気はいいです」
津「惚気じゃないよ。事実だ」
小「ごめん。あんまり参考にならなかったかも」
上「改めて課長のヤバさを実感した」
小「世間から見たらそうかもしれないけど……俺は嬉しかったから」
上「そう思ってる時点でお前もヤバいんだよ。わかってる?」
小「ヤバい……」
上「ヤバい」
津「俺からしたら、どうして二の足を踏んでいるのかがわからない。好きなんでしょ?誰かにとられたらどうするの」
上「それもイヤですけど……嫌われるの怖いじゃないですか」
津「好きの反対は無関心だよ。嫌いでも、ベクトルはこっちに向いてるってことだから怖くない」
上「ポジティブの極みっすね。俺は嫌いな奴はずっと嫌いですよ」
小「上原は良い奴だから、余程のことがない限り嫌われることはないと思う」
上「あぁうん……ありがと……俺を選ばなかったお前に言われても慰めにはならないんだけどな……」
小「それは……ごめん」
上「別に謝ることではないから。選んでもらっても困るし」
津「聞き捨てならないな。上原は小山に選んで欲しかったってこと?選ばれる自信があったってこと?」
上「あーあー違います!課長のこと出し抜いてコイツとどうにかなろうなんてこれっぽっちも思ったことないんで」
津「俺がいなかったら?」
上「そもそも関わってないでしょうね。いけ好かない同僚のままだったと思いますよ」
津「確かに、小山は周りとのコミュニケーションが下手ではあるよね」
小「すみません」
上「最近は丸くなったんじゃないですか。誰かさんのおかげで」
津「俺と小山はお互いにいい影響を与えられる関係ってことだよ」
上「課長はなんも変わってないですけどね」
小「うん。ずっと優しい」
上「……本気で言ってる?」
小「優しいというか、包容力がある……?」
上「う゛うん……包容力と言われると……納得できないわけではない……」
津「気持ち悪いからやめてくれ」
上「ちょお!小山!この人どうにかして!」
小「上原は気持ち悪くないです」
津「庇うんだ。へぇ」
上「待って、俺に被害がない庇い方をお願いします」
津「冗談だよ」
上「目が笑ってませんけど」
小「(面白がってるな……)」


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