葉「悪い。遅くなった」
深「いえ……大丈夫ですか?無理して抜けて来たんじゃ」
葉「無理なら最初から誘ってない。俺のスケジュール管理能力舐めんな」
深「そうですか……」
葉「何飲む?」
深「えーと、ここご飯が美味しいので、いきなり日本酒いってもいいですか?ゆっくり食べたいです」
葉「いいよ。じゃあ俺もお前と同じの」
深「食べ物は?あ、葉山さんの好きなやつありますよ。なめろうとか」
葉「自分の好きなもん頼めよ」
深「?俺も好きですよ?」
葉「前苦手だって言ってなかったか。生魚」
深「あ、それは食わず嫌いっていうか。葉山さんが一回作ってくれたじゃないですか。それがめちゃくちゃ美味しくて、以来俺の中での定番メニューです」
葉「ふーん……あ、俺ちょっと電話かけてくるから、適当に頼んどいて」
深「はい、わかりました」
*
夏「!!これ美味しい!!」
完「一口ちょうだい」
夏「ん」
完「あ、うまい」
夏「でしょ?やっぱり日本酒は辛口が好きだなぁ」
完「あんま飲みすぎるなよ」
夏「わかってるって。これ1杯にしとく」
完「ならいいけど。途中で寝落ちされたら困るし」
夏「しないしない」
完「本当かよ」
夏「折角のクリスマスに僕があの光瀬完治を独り占めしてるんだから。美味しいお酒飲んで、美味しいご飯食べて……寝落ちなんてしたらファンの子に怒られちゃうよ」
完「違う。今じゃない。家帰ってセックスしてるときに寝落ちされたら困るって言ってんの」
夏「ぶふ……っ、げほっ、げほ……っ!!」
完「あ、お前折角の美味しい酒を……」
夏「お前が変なこと言うからだろ……っ!!」
完「しねぇの?」
夏「……するけど!!」
*
深「あー……最高」
葉「お前本当に美味そうに食うよな」
深「だって本当に美味いんですよこれ」
葉「お前と食事してるとなんかほっとする」
深「ほっとする?」
葉「よくわからんけど。そういう感覚が合うのって大事じゃないか」
深「確かに、食事って人間にとって欠かせない活動ですからね。一緒に食事してて苦痛な人って、親しくなれないですよね」
葉「……明日、地球が滅亡するとしたらさ」
深「なんすか急に。今度出る新作ドラマの話ですか?」
葉「ちげーよ。明日地球が滅亡するとしたら、俺はお前と一緒に飯を食いたいなって思ったって話」
深「え?」
葉「俺が最期に一緒にいたいと思う相手がお前だってこと。光栄に思えよ」
深「え、え、え……っ」
葉「はは、慌てすぎだろ」
深「いや……っ、だって、あの葉山さんが、俺と」
葉「あの葉山さんって何だよ。俺はお前といるときはただの男なんだけど」
深「……口説いてるみたいですよ?」
葉「みたいじゃなくて、口説いてるんだ」
深「……」
葉「お前は?口説かれてくれないわけ?」
深「なわけないじゃないですか……俺がどんだけあんたのこと……っ」ぐす
葉「あのなぁ、もう成人してる男がほいほい泣くな」
深「ほいほいじゃないです!!今のは泣いていいとこです!!」
*
夏「……何かすごいもの聞いちゃったね」
完「……うん。まさか隣に二人がいるとは」
夏「まぁ、このお店深水くんから教えてもらったから、鉢合わせの可能性はゼロじゃなかったけど。なんか会話聞いちゃって悪いことした気分だ……」
完「聞こえたんだから仕方ない」
夏「内緒だからな」
完「わかってるって。でも意外だ。葉山さんはもっとこう……俺の魅力に酔いしれろよ、みたいな口説き方すると思ってた」
夏「僕も。多分深水くんの前の葉山さんが素なんだろうな。なんか可愛いよね。一緒にご飯食べたいって」
完「こら。他の男可愛いとか言うな」むぎゅ
夏「うぐ」
完「妬く」
夏「ご、ごめん」
完「俺のことは可愛いって思わないのかよ」
夏「え」
完「かっこいいとは言われたことあるけど」
夏「そりゃ……ある、よ」
完「いつ?」
夏「……今」
完「ちゅーしていい?」
夏「なんで!!ダメダメダメ!!誰かに見られたらどうすんの!?」
完「じゃあ酔ったふりしろよ」
夏「なんでよ」
完「酔ったマネージャーに絡まれてるって感じだったら、キスしても不自然じゃないかなって」
夏「絶対やだ」
*
深「あれっ、夏生くん?」
夏「深水くん」
深「来てたんですね。すごい偶然」
夏「いやー……ごめんね」
深「?」
夏「あっ、なんでもない。気にしないで」
深「完治くんと一緒ですか?」
夏「そうそう」
深「いいですね。クリスマスデートですか」
夏「深水くんだってそうじゃないの?」
深「……デート、ですかね。ただご飯食べてるだけですけど」
夏「好きな人と一緒にいるなら、どこだっていつだってそれはデートだよ」
深「……夏生くんに一つ聞きたいことが」
夏「ん?」
深「その……したくなったら、どう誘ってますか……」
夏「え」
深「俺は明日も朝から仕事なんですけど、葉山さんはオフで、そんであの人変なとこで気遣いしいだから、俺の仕事に響かないように今日は帰れとか言うし」
夏「……深水くんは、帰りたくないと」
深「だって、クリスマスじゃないですか……」
夏「口で言えないならメールしよう!!」
深「メール?」
夏「僕もよく使う手だけど、口に出すのははばかられる言葉でも、文字にすると意外といけちゃうから」
深「でも、すぐ近くにいる人にメールって」
夏「大丈夫。伝えないよりは、その方がずっといいよ」
深「……今送ってみます。一緒にいてもらっていいですか」
夏「う、うん。でもちょっとここ、トイレの前だとあれだから……移動しようか」
完「何。深水くん拾ってきたの。葉山さんは?」
深「……」ぽちぽち
夏「今深水くん頑張ってるとこなんだから、静かにしろよ」
完「頑張ってる?」
夏「明日仕事だけどもっと一緒にいたいって言うんだって。メールで」
完「そんなの直接言えばいいじゃん。葉山さん喜ぶよ」
夏「バカ!直接言えないから困ってるんだろ!」
完「あ、お前もたまにやるよな。隣にいるのにわざわざ文面つくって見せてくるやつ。好きとかかっこいいとかエッチしたいとか」
夏「わぁぁぁぁ!!あぁぁぁ!!」
完「ちょっ……夏が一番うるさい」
葉「(……全部聞こえてんだけど)」
*
後日
完「なに見てんの」
葉「メール」
完「その顔は深水くんからだ」
葉「前もらったやつだけど」
完「あ、クリスマスのときのやつ?」
葉「そう。……見る?」
完「見たい」
葉「見せねぇよ。勿体ない」
完「うっわー最大級の惚気くらった」
葉「いつも俺ばっか聞いてやってるからな。仕返し」
*
おまけ
To 葉山さん
From 深水
無題
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俺は、地球が滅亡しなくても、毎日ずっと一緒にいられたらいいのにって思います。
今も、朝まで一緒にいられたらいいのにって思ってます。
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To 深水
From 葉山
Re:
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バカ
帰るぞ
早く戻って来い
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メリークリスマス!!