01.
「ごめんなさい」
はらはらと涙を流すみょうじに居ても立ってもいられなくなってそっと抱きしめる。みょうじは俺が思ってたよりもずっと線が細い。今のみょうじにとって俺は記憶に存在しない赤の他人かもしれないし、こんなことされたって余計混乱するだけかもしれない。でも、こうでもしなければどこか遠くに行ってしまうような気がして、どうしようもなかった。
「謝んなよ」
「でも、」
「無理して思い出さなくてもいいから、あんまり気負うな」
おもわず抱きしめた腕に力をこめる。全身で感じる温度は、ひどく懐かしく感じられる。
前にも一度、こんなことがあった。忘れもしない、あの日。あの時は逆だった。俺が気が済むまで泣くのをただただみょうじはなにも言わずに抱きしめていてくれた。
「好きなだけ、泣いていいから」
俺の声と被って頭の中でみょうじの声が聞こえる。今日だけは見なかったことにしといてあげる、そう言って俺の背中を撫でた手の温かさにどんなに救われたことか。
「ありがとう、ございます」
慣れないみょうじからの敬語がくすぐったい。
お礼を言うのは、俺の方だ。