トッピングはホイップ・キス


「ノイトラ様、これを!」

「あ? 何だコレ」

「チョコレイトという現世の菓子です」

 綺麗な赤で包まれそれによく栄える金の糸で括られた包みをしげしげと眺め、私をちらりと見てから仕方なしといったように包み紙を剥がしてその中の一つを口に入れた。流行に敏感なロリから聞いた話だと、今日はバレンタインデーというらしく女が男へチョコレイトという菓子を贈り、想いを伝える日らしい。本当は手作りのものをあげたかったが、不器用な上に作り方もまるでわからなかったから、こないだ現世へ赴いた時に義骸なるものをこっそり持ち出して買っておいた物になってしまった。そんなわけだからまずいわけはないのだが、やはり感想が気になってしまう。だが、いくら待っても肝心のノイトラ様はチョコレイトを口にしてから固まったままだ。

「ノイトラ様?」

 心配になって顔を覗き込む。

「………甘、……」

 口元に手を当て、眉間には皺がよっている。……失念していた。バレンタインなるものに浮足立っていて忘れてしまっていたが、ノイトラ様は甘いものが嫌いなのだ。
 慌ててノイトラ様の手の中にまだあるチョコレイトの入った箱を取ろうと手を伸ばす。が、しかしその伸ばした手は虚しくも宙を裂いただけで、目的の物は私の背では届かない高さまで持ち上げられられていた。

「何だ、俺にくれたんじゃなかったのか?」

「、ですが……!」

「うるせえ」

 尚も取り返そうとする私の頭を押さえ、残りのチョコレイトをこれみよがしに全部口の中に流し込んだ。そして私の方を向いてニィ、と笑う。

「な、!」

 わずかに口元に触れた柔らかい何か。至近距離の所為でぼやけるノイトラ様の顔を見ながら何が起こったのかを理解した。

「悪くねえ」

 そういってまた笑い、唇を重ねるノイトラ様は至極愉しそうに私の目には映った。







トッピングはホイップ・キス




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