とある愛の物語
 人が同じ人を愛するというのは、見た目とても簡単なことのようでいてその実中身は黒い感情に容易く支配されてしまう。思うほど、人を愛するということは簡単そうでいて難しい。
 例えば一人の少女と少女を愛する少年が居たとする。
 少女をひたむきに想い続ける少年は、自らの内に潜む黒い感情を隠し続けて少女を愛す。何も知らない少女を騙して騙して騙し続けて、少女でさえも気づかぬ内に、少女の心を雁字搦めに絡めとっていく。微笑みかけて、甘く優しく甘美な言葉を紡ぐ。少女に嘘を吐き続けて、けれど本当の、少女へ向ける愛情だけは偽らず。愛しているということを少女に覚えこませて。
 少女が信じるその少年は、嘘を吐き続けるけれど。それらはすべて、少女を守る為で。少女を傷つけない為で。すべてがすべて、少女の為だった。
 脅えて震える身体を優しく抱きしめて、甘い言葉を囁いて。優しげな微笑みを浮かべて。"嘘"を"真実"に塗り替えて、少女に"嘘"こそが"真実"だと、思い込ませる。
 そうして不要な枷から少女を解き放って、少女の心を己へと完全に向けて、少年は嗤う。
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