実は正反対な双子のお話
沢田綱吉の周囲からの認識は、何をしてもダメダメな奴、である。
上記のことに因り“ダメツナ”という渾名まで頂戴してしまったのだが、最近はそれに加えパンツ一丁で並盛を走り回る露出狂という大変嬉しくないものまで追加された。
冴えない容姿の所為もあり女子にも然して人気がある訳でもない。
しかしそんな彼であるが、何故か周囲には獄寺隼人、山本武という並中で女子からの人気が絶大な二人が常に傍にいるのである。
かといってクラスメイト達との関係は悪い訳ではない。至極良好だ。
過去に剣道部の持田という生徒と一悶着あったことはあったが、その際は並盛の秩序こと雲雀恭弥率いる風紀委員により綺麗に後片付けがなされたのでこれといった問題は存在していない。
本人の性格も気弱で優しく、獄寺隼人と共にいる為問題児や不良と思われがちだが、嫌われたり恨まれたりするような性格ではない。何時もつるんでいる仲間からは、非常に仲間思いだという認識が為されている。
──以上が沢田綱吉の周囲からの総合的な評価のまとめである。
そして、沢田綱吉には似ても似つかない片割れがいる。二卵性双生児だというのだから、見た目が余り似ていないのは仕方のないことだ。
いくら双子と言えど、結局は個人であるから、性格が似ていないのも頷ける。
しかし、似ていないのは残念ながらそれだけではなかった。
片割れ、妹の沢田藍の先ず真っ先に挙げられる違う点は、ダメツナと称される兄とは対照的に、そこそこの優等生であることだろう。
成績、生活態度、運動神経全てが総合的に良い。おまけに冴えない容姿の兄と違い綺麗系の美人。
教師からもとても双子とは思えないと言われるくらいには、その共通点の無さは顕著だ。
また、性格も内気で弱気な兄と正反対に友好的で、時には強気な場面も見られる。
だがやはり双子なのか、優しいところが多々見られ、常に共にいる幼馴染で従姉妹である桐生沙夜のことを気遣っているところがよく目撃されている。
クラスメイトとの関係も良好。
なんだかんだいって片割れの沢田綱吉とも仲は良いようである。
似ていない部分は多々見られるものの、やはり双子らしく探してみると共通点はあるのだ。
似ていないようでいて、似ているところがたくさんある仲の良い双子、というのが沢田兄妹の周囲の認識である。
だが、彼女──沢田藍の周囲の認識は、実は大層間違っている。
彼女のその姿が捏造されたものなのだと知る者は、本当の彼女を知る者しか知り得ない。