場面は、またどこかの薄暗い倉庫へと移る。


(…気づいたか)

埃と砂に塗れて汚れに汚れた倉庫の中の空気は、閉め切られている所為もあり、外のそれと比べれば、山の頂上と地上の酸素の濃さに違いがあるように、酷く淀んでいる。一度呼吸をすれば空気中に舞う埃や塵まで一緒に吸い込んでしまいそうで、衛生的にも健康にもすこぶる悪い。悪い以外の何物でもない。

なるべく呼吸を必要以上しないように動かずじっと床にへたりこんでいたのだが、そろそろ動いたほうがいいだろうか。壊そうと思えば堅く扉を閉ざしている閂の一つや二つすぐに壊せるのだが、今回ばかりはそれをしないと決めている。ある、目的の為に。そしてそれは、"彼女"に時が来るまで知られては、いけない───



ふぅ。

溜め息の音が倉庫の中にいやに大きく響いた。

霊圧を探れば、ぼちぼち皆動き出したらしい。ぐちぐち文句を言われるだろうな、などと。自らの奥底からじわじわ湧き上がる黒い何かを抑えるように、直弥はそっと瞳を閉じて額に手をやった。








ぐにゃぐにゃ。ぼこぼこ。ぶちぶち、ぶちん。

脳裏に蘇った嫌な音には蓋をして。気づかない、振りをした。
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