窓から見える空と同じぐらい生徒会室の部屋の空気はどんよりしていた。
部屋には私と会長の二人だけ。颯人君と翼君がどこにいるのかは知らない、というか何も考えたくなかった。
曇
天
それはついさっきの事だ。私が生徒会室に入るとソファに会長が横たわっていた。寝ているのだろうか、腕が邪魔で顔が見えない。
覗き込もうと近づいた。
「つきこ、」
「え・・・」
近づいた瞬間に腕を掴まれ唇を噛まれた。痛い、血と涙が滲む。突然の出来事に私は何も反応が出来ない。唖然としている私の唇から出る血を舐められ漸く我に返る。
「・・・・っ」
「なあ月子、俺を殺してくれよ」
そう言った会長の目は空の雲よりもどんよりとしていて怖かった。これは誰なのだろう、少なくとも私の知っている不知火一樹は目にこんな色を湛える人ではない。ないはずなのに、前にいるのは私の知っている不知火一樹でなんだか泣きたくなった。
「どうしたんですか」
「別に、疲れただけさ。で、お前は俺を殺してくれる?」
私は何も答えない、答えられない。会長は泣いていた。男の人が泣くのって初めて見た気がする、できればこの先こんな涙は見たくないと受け入れられない現実を拒絶するかのように思った。窓から雨が打ちつけてくる音も聞こえて空も泣きだしたのだと知った。
「・・・悪い、忘れてくれ」
会長はまたソファに横たわった。私はこの場から逃げ出したいのに足が動かない、なんだかこの人を放っておけないと感じるから。
何か言えばよかったのだろうか、でも何を?わからない、分からないけど次に会長が起きたらまたいつもの笑顔に戻っていることだけは分かった。