あの人の後ろ姿ばかりが目に焼き付いて、離れなくて、追いかけても追いかけても追い付くことは叶わずにいます。
出会った時より近づいているわけでもなく、私が必死に追い付こうと頑張ってもそれより早くあの人は駆けてしまうからどうしようもありませんでした。どんなに足掻いてもあの人に追い付くことは不可能なのだとある時思いました。だから私は同じ場所に立つことを諦めました。
そして私は私にしか出来ないことを見付けることが出来たのです。
どうぞ駆けて抜けて下さい。思う存分、気の済むまで、後悔することなく、あなたの信念を天高く掲げて生きて下さい。
もしあなたが擦りきれ疲れ果ててしまったのなら、私があなたを抱擁しましょう、叱咤しましょう。
自惚れかもしれませんが、これは私にしか出来ないことなのです。共に戦うことはできないけれど、あなたの心に寄り添うことは私にも出来るはずです。
あなたは隠しているつもりかもしれませんが、あなたが苦しんでいること、悲しんでいること、皆知っているのですよ。私も知っています、痛いくらいに知っています。
あなたと共に戦場にいることが叶わないのなら、せめてその痛みを私にも分け与えて下さい。
もしあなたが泣くことが出来ないのなら私が代わりに涙を流して差し上げましょう。
そうやってあなたに少しでも安らぎを与えることが出来たのなら、一度は女の身として生まれたことを後悔しましたが、女に生まれて良かったと思えるでしょう。